第45話 造船所の策略

売る側は、あれもこれも付いてますよ、標準ですよ、キャビンも広いし、これならゆったり寛げますよ、
と当然アピールします。これに反応するように、そうかそれは便利だな、これなら皆で集まった時も
この広さあればいいね。と、こんな感想を漏らされます。まんまと策略にはまってしまった。売る側
も買う側も両方供です。

これに慣れてしまった我々は何時の間にか普通の事と受け止めるまでになったわけです。それなの
に、動かない。

装備が増える度に気持ちが重くなってきていませんか?大きな船体に乗る度に嫌な緊張感が溢れて
きませんか?造船所はヨットはセーリングするものであり、別荘を造っているわけでは無い。それが
いつのまにか別荘を造る建築業になってきているような気がします。おしきせの仕様をそのまま受け
入れてきた。工夫するという事は考えなくなってきたのではないでしょうか。

船体の重心は高くなり、バランスは崩れ、せっかく夢を持ったオーナーはメインテナンスに追われ、いざ
セーリングしても、ここからあそこへの移動手段となっている。自分の本来の乗り方とは違ったもの、こん
なはずでは無かったと思われる事はないでしょうか。何でもあれば良いというものでは無い、必要無いな
ら無い方が良い。海の場合、条件は悪いし、過酷です。装備はちゃんと面倒を見なければなりません。
錆びがでてきたり、その錆びがあたりを汚し、面倒な事になります。せっかくりっぱなヨットを購入したので
大事にしたいという気持ちもわかります。その為フルカバーをかける。これっていざ乗る時ははずすのが面
倒ですし、まして帰ってきた時は元に戻すのは大変です。こういう事を考えると出るのもうっとおしい。
ちょっとマリーナにきて、エンジンかけるのさえ、うっとおしい。

装備が良くなるにつれ、大型になるにつれ、ヨットから離れていってしまうような、そんな気がしてなりません。
もう一度考え直して、自分のヨットライフを組み立てなおしてはいかがでしょうか。


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