第四十三話 それぞれの楽しみ方

人は十人十色と言われますが、同じデイセーリングでも、私の考えの及ばない
楽しみ方もあると思いますので、それぞれが自分の楽しい方法を演出して、楽
しむ事ができれば、それで良いと思います。スポーツセーリング、シングルハンド
はその内のひとつに過ぎません。とにかく、ヨットという物があり、せっかくヨットの
世界に入るという、1万人にひとりの非常にラッキーな運を持ったわけですから、
1万人を代表して、ヨットという物を生かし、充分に堪能していただければと思い
ます。運を台無しにするも、有効利用するも個人の勝手ではありますが、せっか
くの流れがあり、それに乗ったのですから、良い使い方をして頂きたいものです。
忙しい方は忙しい方なりの方法で、せめて1ヶ月に2回ぐらいはセーリングして頂
きたいと思います。その回数を多くできる可能性はシングルハンドにある。

シングルハンドが難しいと思われるのであれば、それではどうやったら可能になる
かを検討してみてはどうでしょうか。大半の問題はマリーナからの出し入れにある
と思いますので、それがどうやったら可能か?練習が必要なら、その部分の練習
だけで付き合ってくれる人を探して、シングルでの出し入れを練習して下さい。
その後、出してからは、オートパイロットなどもありますし、たいていの事はできます。
ただ、舵はほとんどオートパイロットでというより、やはり自分でできるだけ持って、
そのうえでいろんな操作をする。できるだけオートパイロットに頼らない方が良いと
思います。何故なら、その方が面白いからです。でも、艤装の位置や取り回しがどう
しても届かない場合は、オートパイロットを使う事にはなるとは思いますが、できるだ
け自分で舵を持つという方法を考えてください。

サイズ的にシングルハンドが無理ならば、せめてもう一人相棒を造ってください。
奥さんでも、息子でも、娘でも、友人でも、誰でも、一緒に乗れる人を一人確保
しさえすれば、大きなヨットでもバッチリ動かせます。そして、できれば、自分の
乗り方に合う人を見つけれれば良いですね。自分はどんどんセーリングしたいの
に相棒が酒飲みたいだけなら、これは合わない。ヨットの素人でも構いませんが、
オーナーの乗り方に賛同してくれる人が良い。ヨットの事はこれからどんどん乗れ
ば学ぶ事ができます。ですから経験者である必要は無いと思います。二人の向かう
先が同じなら、とても良いパートナーになると思います。私も個人的に経験済みで、
オーナーがスポーツセーリング志向でしたので、私とふたりで良くセーリングにでまし
た。53フィートありましたし、スピンだって上げれました。大人数いればもっと素早く
できる事がひとつひとつ順を追ってやるという事もありますが、それで良いと思います。
充分に楽しめました。ダブルハンドなら、大きなヨットでも充分出せます。それだけでは
無く、楽しめる。返って、大人数で、一部のパートのみやるより、何でもかんでもやれま
すので面白かったです。ヨット全体の事が良く解ります。一人が舵を握って、もうひとり
がセールハンドリングをやる。これを交代でやります。レーサーのように各パートに
分けてやるより、何でもやる方が面白いと感じました。

シングル、或いはダブルで自由自在に操る事ができれば、それ以上の人数が居る
場合も臨機応変に対応できますので、どうにでもなる。53フィートあっても、日常は
デイセーリングでした。1回につき、3時間ぐらい、場合によっては午前と午後の2回
出した事もありますし、二人でスピンをあげる方法を話し合って、実行する。うまく行く
時、失敗もありますが、これも全部含めて楽しいセーリングでした。最初はぎこちない
タッキングもどんどんスムースになっていきますし、二人の息が合ってくるのが解ります
これはダブルハンドならではの楽しみ方でもあると思います。私は何が何でもシングル
ハンドとは言いません。ただ、同じ志向のパートナーが居ればそれにこした事は無いの
ですが、それが無理ならシングルハンド、と思っています。人数が増えれば増える程
全ての人が都合良くはいきません。それなら、いつでもできる少人数の方がベターだと
思います。そしてその基本人数、シングルかダブル、で自由自在にセーリングをしよう。
これがベースなら、ヨットは実に面白い。

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