第八十九話 ファーリングジェネカー

以前にファーリングジェネカーについて書きましたが、メーカーから返事が来ました。数回の
やりとりをして、だいたい全貌が掴めてきました。このジェネカーのシステムは簡単な物で
す。ところが、この簡単な物に何故今まで気がつかなかったのかと思います。

エンドレスロープを配したファーリングドラム、それにフレキシブルなステイになる物、フレキ
シブルですから、ぐるぐると丸める事ができるのですが、これが、ファーリングで回転させて
もよじれない。ここがミソという感じです。それで、ジェネカーのピークとタックのみを固定して
その中間はフリーです。それで、回転させるとピーク側から順にタック側に向かって巻いて
行きます。この時、セーリング中、いつでも巻く事ができる。さらに画期的と思うのは、巻いた
まま、降ろさなくて良いという事です。そのまま今度はジェノアでセーリングを続けられる。これ
は素晴らしい事です。ますますセーリングが面白くなります。

つまり、こういう事になります。マリーナで出航する前にセットしておく。出航して、メインとジブ
を展開する。アビーム程度まではジェノアで走り、これからダウンウィンドになったら、ジェノア
を巻いてしまう。そして、今度はジェネカーを展開する。そして、再び、のぼりになってきたら、
ジェネカーを巻いてしまい、今度はジェノアを出す。こういう一連の動きが、自由自在にできる
事になります。そして、マリーナに帰ってきたら、ジェネカーをファーリングシステムごと降ろして
丸めてバッグにしまう。これで終わり。ジェネカーの上げ下げがセーリング中に行わなくて良い
という事ですから、これは良い。

多くの方々も同じ気持ちだと思いますが、セーリングをスタートして、のぼりは良いにしても、帰
りがダウンウィンドになり、ジェネカーを開こうにも、ちょっと面倒だとか、シングルではできない
とか、そういう事で、ジェノアを何とか開こうとします。観音開きにしてみたり、ウィスカーポール
を使ってみたり、でも、ダウンウィンドですから、風と同じ方向に走る為、どうもスピード感が無い。
こういうちょっと退屈な思いをした事があると思います。それで、ジェネカーを何とか使えないかと
思いますが、シングルの場合はオートパイロットをかけて、バウへ行き、ハリヤードをセットして
一気に上げる。コクピットにハリヤードがあると、何か不具合があるたびにバウへ行く。そして、
上げて、袋をはずして展開する。ここまではまだ良い。降ろす時はジェネカーをメインの影に入れて
袋をかける。でも、降ろす時、ハリヤードをゆっくり降ろすが、同時にセールの回収もしなければ
ならない。まあ、クルーがいればかなりやりやすくはないますが、シングルではそうも行かない。
こういう事で、退屈なダウンウィンドの場面を何とかしたいものの、できなかった。それで、ジェネカ
ーは使わずじまい。こういうケースは多いのではないでしょうか。

ところが、このシステムを使えば、いつでも出し入れができる。ダウンウィンドが俄然面白くなります。
従来のファーリングジェネカーとの違いは、ジェネカーのラフ部分が完全にフリーで、既存のセールに
何ら加工が必要無いという事です。それにセットしたまま、巻いた状態で降ろさずにセーリングができ
るという事です。メーカーはマリーナに帰ってきたらシステムを降ろしてくださいと言います。それは
セールが傷むからです。

これで、セーリングのあらゆる方向に対して、気軽にセーリングができるようになりました。このシステ
ムは、画期的なアイデアとして、どこかの賞を取ったそうです。



この図の真っ直ぐな棒に見える物、これが降ろすとぐにゃぐにゃに柔らかく、セールを巻いた状態で
丸めてバッグに入れられる。次から次へと進化していますね。ますます、セーリングが気軽に楽しめる
ようになてきました。これから先どんな物が出てくるか、楽しみです。

種類は5種類、ジェネカーセールの面積とマストからバウスプリットまでの長さで決まります。最も小さな
サイズで、セール面積が110u以下、長さ9m以下、これで重量が4.95kg。ドラム外径126mmです
コンプリートセットで1,380ユーロ、日本円で20万ぐらいしますね。ちょっと高いかもしれませんが、まあ、
使わない何かをつけるよりがずっとましだと思うのですが。興味ある方はメールを下さい。ちなみにこの同じ
ドラムで長さ15m(セール面積は110u以下)まで使います。この上ですとジェネカーのセール面積は
200uまでとなっていますから35,6フィートぐらいのヨットまで行けるんじゃないでしょうか。実績は80フィ
ートというのがありました。小さいのは27フィートに付けた事があるそうです。もちろん、小さい方は問題は
無いでしょうが。

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