第三十二話 新年

明けましておめでとうございます。本年も宜しく御願い致します。どんな年になるか
楽しみでもありますが、ようやく日本も長い不況から脱出の兆しが見えてきました。
ここで、再び増税の話が出ていますが、過去において消費税導入により橋本総理
と同じ事をしようというのですから、何をかいわんやですが、今度の場合はそれでも
回復の力強さを感じます。

さて、今年のテーマですが、新艇の回復とシングルハンドの推進です。これまでは
中古艇の時代でしたが、もう中古艇も底をついてきました。経済の回復、一方では
中古艇もかなり古くなってきました。健全なる市場を形成するには、順次新艇の導入
が必然です。そして2005年はバブル期以降の最初の新艇の年としましょう。

シングルハンドは前々から推奨してきましたが、新たに、ここから出発します。シング
ルハンド艇が欧米でも出てきましたし、このジャンルを確立したいと思います。
シングルハンドはただ一人で操船できれば良いというものでもありません。全てを自分
で把握するという態度とします。そして、これが最も楽しむ方法でもあります。それで
2005年、全ての方にシングルハンドをお奨めします。例え、クルーが居る方でも、ある
いはヨットがでかくて一人では全く無理だと言われる方でも、みなさんにシングルへの
方向での、現実に一人で操船できないとしても、気持ち的にはシングルを目指す方向
をお奨めしていきます。

シングルハンドは操船のみを考えがちですが、加えて、自分のヨットの全てを把握する
という態度が出てきます。少なくとも、自分のヨットぐらいは全てを把握したいものです。
それは自分の安全の為でもありますが、それ以上に、解るともっと面白くなるからです。
どこに何がついていて、それらがどう繋がり、どんな役目をしているのか、全てを知ります
機器類について、セールについて、シート類について、何でもです。ひとつの事の原因が
ひとつには無く、複合的な原因という事もあり、それらが解ってくる。逆に、ひとつの事が
ふたつ以上の事に影響を与え、結果として現れてくる。これらがちゃんと理解できれば、
トータルとしての理解が深まれば、非常に面白い物となっていきます。何も、宴会だけが
ヨット遊びではありません。ヨットはシンプルにして、同時に複雑な要素がからみあってい
る。そういう知的遊びでもある。シングルを目指せば、誰でも自分で知る必要があります。
その知る態度がヨットをさらに面白くする。ですから、クルーが居ても、この楽しみをクルー
に投げないで、自分で把握する。でかいヨットだろうが、自分で全てを知る。

先日、エンジンのオーバーヒートの警報が鳴ったと連絡がありました。そこでどこを見たら
良いかという質問です。こういう事をいちいち電話して聞いていてはヨットは自分のもの
はならない。もちろん、初心者はOKです。どんどん聞くべきです。でも、こういうトラブルを
経験したら、それに関しては理解を深めておく必要があります。さらに、今回の場合、海水
の冷却水のフィルター詰まりだったのですが、それを掃除するのに、バルブを締めずに、
フィルターを明けようとされた。当然、海水が船内に入ってくる。誰でも、ちょっと考えれば
気がつく事ですが、言われるまでは考えていない。自分で考える事が必要です。そうすれば
ひとつひつの経験が積み重なって、全てを把握できる。何かが起こった時でも、どこを見れば
いいかが解る。何も、電気やエンジンに精通しろという話ではありません。ポイントを押さえる
という事です。全てにプロになるという事では無く、自分のヨットだけでも充分に理解するという
事です。こんな事がヨットを面白い物に変えてしまう。

何度でも言いますが、シングルハンドは究極です。自分がセーリングの仕方を知り、各部を知り
全てを把握しますから、自分がヨットのボスになります。クルーが居ても、自分が理解していれば
何をどうしたら良いかも解りますから、本当のボスです。オーナーです。でかいヨットのオーナー
も自分で全てを把握しようというシングルハンド的態度を持っていただきたい。一度に全ては無理
でも、少しづつ理解が深まると同時に面白さが増してくる。ですから、全ての方にシングルハンド
的態度をお奨めします。そして、実際にシングルハンドができれば、もうこれは万能な乗り方です。
いつ、誰が来ても、安心してヨットを楽しめる。

次へ       目次へ