第十五話 暇とお金

結局、ヨットを遊ぶには、どれだけの暇とどれだけの予算があるかにかかってくる。
予算は、ヨットの質やサイズを限定してくれるし、時間も同じ。但し、時間を考えない
人は多い。どれだけの時間をヨットに費やしたいのか、よいう事です。ヨーロッパでは
4〜5週間の休暇、アメリカでは2週間が一般的なようです。後は、週末か、仕事の
後という事になる。日本では2週間の連続休暇は可能でしょうか?

今年のアメリカのボートショーでは、顕著な動向が見られた。デイセーラーの台頭で
ある。当社でも取り扱っているヨット以外にも、あのヒンクリーもデイセーラーを出して
きた。そして、いずれもクラシックスタイル、高いスタビリティー、フィンキール、高い
帆走性能、ライフライン無し、イージーセーリング、キャビンはメインサロンのみを充実
させ、他のキャビンは無いか、狭い。それが、ヨーロッパでも同様にデイセーラーは
あるが、アメリカ程では無い。忙しいアメリカ人という事であろうか。ヨーロッパの方が
ゆったりしているのであろう。時間がたっぷりあれば、何もデイセーラーに落ち着く必
要は無い。イタリアのブレンタ38は確かにシングルハンドデイセーラーだが、スポーツ
カーを意識したようなタイプで、アメリカのそれとは異なる。

忙しいアメリカ人にとって、シングルハンドのデイセーラーが市場を形成しているのなら、
もっと時間の無い日本人にとっては、もっとこういう市場が先に形成されてしかるべきで
はなかったかと思う。だが、何故か、キャビンばかりが目につくヨットが多いのは何故だろ
うか。キャビンで過ごす時間も無いのに、何故、1,2,3,4と何人寝れるかカウントする
のだろうか。ヨットで寝れる暇の無いのに、キャビンばかりを重視するもんだから、セーリ
ングさえもしなくなった。わざわざ、使えないように、使えないように、知恵をしぼっている
ようなものだ。もっと、冷静に考えてみると、どんなヨットが最も使えるか、喜びをもたらして
くれるのか、新しい感覚を得られるのか、とても解り易い。しかしながら、まだ、誰もそうし
ないもんだから、右へならえ。右へならったら、同じように使えなかった。他人と違う事をす
るのは勇気が要る。でも、その勇気がある人が楽しめるのです。たかがヨットです。その
ヨットに全てを求めるような事はしない事です。家に居る時のような広さと快適さ、それで
いて帆走の面白さ、快適さ、速さ、そんなものは両立しない。

キャビンを求めるか、セーリングを求めるか。明白です。キャビンは家にもある。セーリング
はどこにも無い。ならばセーリングを求めた方が良い。それで、取れる時間を考える。引退
した方々はたっぷりある。しかし、現役ビジネスマンには無い。少ない時間を有効に楽しむ
方法を考える。たっぷりある人は、たっぷり過ごせるので、選択も変わる。しかしながら、
たっぷりあるはずの方々も、あまりヨットには来ない。何故だろうか?結局、日本人の気質
ではないかと思う。例え、たっぷりの時間があっても、たっぷりのキャビンがあっても、そこ
で過ごすという時間を過ごせない。そういうスタイルを好まないのではないか。頭では考え
たが、実際は家に帰って寝るのを好む。というより、キャビンで何日も過ごせない。日本人
は常に何かをする性質がある。したいという性質がある。何もせずに、ただのんびりできな
い人種なのです。朝から晩まで、日曜日はだらだらと過ごす。これは単に仕事の疲れから
きている。でも、こういう人達も、暇が有り過ぎると、のんびりできない。何かをしたくなる。
キャビンでのんびりなんて、それなら家でテレビ見ながらビールでも飲んでいた方が増し。
てな具合。それで、ヨットに行く時は、何かをしに行く時です。何かをしに行くのですから、
キャビンでじっとなんかしてられない。それでセーリングに行くのですが、そのセーリングが
やりにくいのならそれも面倒になる。それを選んだのはあなた自身なのに。

やっぱり、日本人にセーリングが一番です。イージーセーリング。スポーツクルージング、
そういうのが最も合う。さっと来て、10分以内に準備ができて、さ〜っとセーリングして、
まあ、キャビンではちょっとお茶でも飲んで、その程度が最も使いやすい。その方が合うし
楽しめる。年に1回の大宴会なら、コクピットでもできる。ポンツーンまではみ出しても良い。

次へ        目次へ