第十話 ジェネカー

クルージング艇ではスピンセールは殆ど使われていません。メインやジェノアはよれよれ
でもスピンは殆ど新品に近い。最近では、スピンよりもっと使いやすいジェネカーが出て
来ましたので,装備はかなり簡素化できるようになりました。何しろ、ポールが要らない
というのはありがたいです。でも、それでもクルージング艇においてはジェネカーを使って
いる光景をあまり見る事はありません。そして、さらにこのジェネカーを長い袋に入れて、
袋のまま上げ、そして、袋をロープを使って上に引き上げる。これでセールが展開、どん
どん楽になっています。

セールはジブとメインがあれば、とりあえず走れます。しかしながら、ダウンウィンドになる
と途端に風が消え、面白みが無くなってくる。ジェノアはうまく横に張り出さずに、下にたれ
てきたり、ジブシートをもっと外側から引ければ良いのでしょうが、それは無理。さっきまで
上りやアビームで結構面白かったのに、ダウンウィンドになった途端に退屈風が吹いてくる。
こういう時はすかさずジェネカーを上げたいですね。

思った以上にジェネカーは使用範囲が広く、これで結構上る。つまり、アビームから少し上に
も上る。クローズで走って、風下に少しづつ落し、この先、アビームからダウンウィンドの走り
が続くなら、ここはジェネカーを登場させた方が面白いです。スピードがぜんぜん違ってくる。
面白い走りができます。

ところが、これを上げるのが面倒と思ってしまうんですね。しかもクルーが要る。面白い事する
のに面倒がってはいけません。クルーが一人居るなら、そう強風で無い限り二人でも上げら
れます。でも、もし、一人なら、クルーが居ないのなら、一人で上げる工夫をします。あるオー
ナーはオートパイロットをかけて、ジェネカーを一人であげます。その代わり、ちょっと工夫が
あります。ハリヤードはマスト根元まで、それにカムクリートを設置、オーパイかけて、バウへ
行き、そこでジェネカーを上げる。問題は降ろす時です。ハリヤードがマスト根元にありますか
ら、それを緩めながらセールを取りこみます。必要に応じて、いつでもハリヤードをカムクリート
にかける事ができる。セールの取りこみとハリヤードの緩めを同時に一人でこなされています。
強風時にはジェノアとメインでも良く走ってくれる。でも、風があまり無い時はジェネカーが活躍
してくれる。どんな時、どんな風にしたいか、それを可能にするにはどうしたら良いか、そんな事
を考え、試すのが実に楽しいのです。そして、うまくいったら尚楽しい。さて、次はどうしようかと
なる。

さらに楽にするには、ファーリングジェネカーというのがあります。第一印象はスピン記事のファ
ーリングジェノアみたいな物という感じでした。ドラフトは深い。セールは巻いたままハリヤード
で上げ、ジェノアと同じように展開します。終わったら、巻いて、降ろす。かなり楽です。セーリ
ングが楽しくなるなら、どんどん採用していきたいですね。便利で退屈なら不要ですが、便利で
エキサイティングなら大歓迎。

フラクショナルリグで、ジブを小さめにして、メインを大きく、これにジェネカーの割合をもっと広げ
るようにすると良いのではないかと思います。フラクショナルでしたら、ジェネカーも少し小さく
なりますので、取り扱いも少し楽になる。大きなジェノアを持っていても、ダウンウィンドでは
なかなか開かない。いつも言っています。大きなメインと小さなジブ、これにジェネカー。アビーム
から後ろはジェネカーを使う。まだまだ楽に展開する方法もあるかもしれませんね。そういう事を
使いながら考えます。これがまた、面白い。

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