第四十四話 もっと近場を重視すべきでは?

   
   

世の中にはひたすら遠くを旅する事を目的にする方がおられます。世界一周なんかもやるわけですが、但し当然ですがそれらは極少数です。少数だからこそニュースになる。すごいな〜なんて事になります。ただ少数という事はほとんどの方々は世界を目指すなんて事は無いわけで、そしてその行動範囲が狭くなればなる程やる方々は多くなります。つまり近場の航行が圧倒的に多いわけでそれで良いと思います。逆に近場をもっともっと重要視して考えるべきだと思います。何しろみんながやれる面白いヨットライフ、何らかの記録を作る事が目的では無く自分達が面白く楽しくするのが目的ですから。

小さなヨットも大きなヨットももっと近場でどういう風にやれば面白いかを考えた方が良い。大きなヨットはロングを考えがちだが、行きたい人、行ける人が行けば良い。一方、時間の無い人もたくさん居るわけで、それなら近場だって楽しめる方法はありますから近場を如何に楽しむかを考える。

近場と言ってもいろんな範囲がありますから、自分達の都合で決めれば良いわけで、それも往復を考えるとせいぜい一週間以内がまあ限度かな?一泊、二泊程度でも良いし、日帰りでも良いし、半日でも良い。その範囲によって遊び方も違ってくると思います。それを工夫する。どこに行くか?そこで何をするか?行先での楽しみ方という事になるかな? 近場のメリットは何度もできるという事、遠くだったら年に一回かもしれない、或いは数年に一回かもしれない。しかし、近場なら何度も何度もやれる。この違いは大きい。何度も繰り返した方が、例え一回が短くても、体が覚える。

短期間の旅だと到着時間を考えるとエンジンで走る事が多くなる。セールは風向きが良ければ出すという具合。エンジンだと、だいたいの時間を計算する事ができて目的地に暗くなる前に到着する事を考える。それで良いと思います。これはセーリングが主目的では無く旅が目的なのですから。旅先でゆっくりできます。

それが日帰りのか半日とかになるとどこかに行くわけでは無い場合は当然ながらセーリングが主目的になる。やっとセーリングそのものが目的になります。セーリングはヨットの主たる機能です。やっとここで出てくる。そう、セーリングを楽しみたいならデイセーリング、旅を楽しみたいならクルージング、もっと遠くへ行きたいなら冒険です。

私はデイセーリングのセーリングが主でその他はおまけ程度に考えています。それだけセーリングは面白く他では味わえない要素、旅はその航程もありますがヨット以外での旅という事もあり得る。でもセーリングはヨットじゃなくちゃできない事です。セーリングは他とは全く異なる要素でありいわばこれも冒険の類と言って良いと思います。気軽なんですが要素的には冒険なのです。他に無いのですから。

風で走りますがその風のパワーを制御する事はできません。強い弱いの風を制御できない。だからこそそこに面白さを発見する事になります。どうしたらその風に対応できるか?そこが面白さの要因です。ただのんびり走る事もできますが風への対応を考えれば考える程に難しくなる。それによって走りが違ってくる。それを楽しむのがセーリングです。

ただ、セーリングというのはオーナー次第でどこまで対応するかは自由です。簡単な処からとてつも無く複雑なレベルまであって、どこまでやるかはオーナー次第、という事は初心者から超ベテランまで自分達のレベルでセーリングする事ができる。それが良いですね。ヨットをマスターしないとセーリングができないなんて事は全く無くて、簡単なレベルで対応してセーリングできるし自分が上達したらそのレベルでのセーリングでもできる。セーリングの寛容な処です。だからこそ、この近場のセーリングは最も流行るべき基本的なヨット遊びです。もちろんピクニックもできる。

昨今、大型サイズのヨットが増えてきました。そのキャビンのでかさは欧米の市場がキャビンを求めてきたせいだろうと思います。欧米ではヨット泊は普通の事、毎週末にやる人たちも居ればヨットに住み込んでしまった人達も少なくない。だからでかいキャビンが重宝します。でも、日本ではそうじゃない。もちろん別荘的な使い方をする人達も居ますが決してメジャーでは無い。では何をするか?

まあ、動かないヨットが多いのですがそういう方々にピクニックからセーリングを目の前の近場の海域で楽しむ事をお勧めしたいと思います。どんなヨットだってセーリングはできますから。


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