第八十四話 TES28がやってきた


      

やって来たと言っても、本当はやっと来たという感じです。と言いますのも、コロナの影響とスエズ運河におけるコンテナ船の座礁で、かなり納期が遅れてしまいました。オーナーに対しては、大変ご迷惑をおかけしてしまいました。

造船所そのものは、コロナの影響を直接受けたわけではありません。でも、ヨットには数多くの艤装品が使われており、そこのメーカーがコロナの影響で生産が落ち、納期が大幅に遅れてしまいました。その上に、いざ出荷となったら、今度はスエズ運河でコンテナ船が座礁したもんですから、数多くの船が通れなくなってしまいました。さらに、その後、スエズが開通したら、それまで待っていた船が一斉に通過していったもんですから、今度は港が大変混雑し、結局、船のスケジュールがどんどん遅れてしまいました。最も辛かったのは、遅れても、では次はいつになるとは明確に答えられなかった事です。

それでもやっと到着したのですが、港が混雑しており、税関検査に時間がかかる。まあ、仕方無いと言えば仕方ないのですが、でも、無事にやってきました。さあ、これから艤装の開始です。これについては、また別の機会に掲載したいと思います。

ヨットの輸送は、一般的にはコンテナ船を使います。コンテナには密閉されたボックスになっているのが一般的ですが、これにはヨットは入りませんので、コンテナの天井や壁が無い物、フラットラックと言いますが、これに積んできます。コンテナは世界共通の規格サイズで、世界のどこに持って行っても港に設置されたガントリークレーンで積み下ろしができるようになっています。ところが、ヨットなんかありますと作業が面倒くさくなります。さらに、縦横のでっぱりがありますと、両サイドにくっつけて別のコンテナを詰めないし、当然、上にも積み重ねる事ができません。それで、料金が高くなるんですね。 時々ですが、輸送貨物が非常に多い場合、船会社は積みたがらない。効率悪いですから。或いは、異常に高い費用を要求してくる事もあります。逆に、貨物が非常に少ないなんかの時は、これが安くなる。

上の写真が、40フィートフラットラックにヨットを積み込んだ状態です。横も出っ張ってますし、上も出っ張ってます。キールを外していますので、これでもかなり低くなっています。どうせ上に積み重ねできないのに、何故、キールを外して持ってくるかと言いますと、当然高さが低い方が料金が安くなりますし、さらに、日本に到着して、マリーナに輸送するにも、高すぎるとトレーラーの輸送料金が高くなったりします。

白いカバーはシュリンクラップと言って、熱を加えると収縮します。長い航海で、しかも船のデッキに置かれますから、汚れるのを防ぐ為、それと輸送の為の船台が必ず必要になります。 さあ、これからマリーナへ移動し艤装の開始です。


目次へ      次へ