第六十五話 最新木造艇


      

日本では木造建造が非常に少なくなってしまいました。でも、世界を見れば、多くの造船所が木造で建造しています。とは言っても、昔と同じ工法では無く、最新工法による木造で、何故木造か? と聞きますと、ひとつはモールド不要ですから、カスタム建造に都合が良い。それに木造は振動を吸収し、また軽く、強いそうです。

写真はライマンモース社が建造しているLM46.コンセプトはパフォーマンスクルーザーです。確か、昨年、一号艇を建造開始して、それから、二号艇も造り始めたとかで、今は三号艇の商談中なんだそうです。やっぱりマーケットが違うな〜なんて溜息。このヨットはカスタムですから自由に造れるわけですが、カスタムであっても、こうやって一艇だけに終わらず、二号、三号と続いていくと、これがひとつのブランドとして進行していきます。

つまり、基本デザインは既にあるわけで、このデザインを基本的に採用する限りにおいては、価格的には最初からのカスタムと比べると価格を抑えられる。もちろん、カスタムですから、変更は自由です。ただ、あまりにも変更やり過ぎると、全く異なるデザインになり、そのデザイン料がかかるかもしれしれませんが。

このヨットはハイパフォーマンスのクルージング艇です。高いパフォーマンスが面白いと同時に、居住性も必要です。その居住性をどこまで求めるか? シンプル化して軽量化するか、重厚なキャビンとするか?

  木造フレームがあって、それに木目の方向性
  を変えながら、何層も木材を敷き詰める。まる
  でFRPのグラスを貼る様な感じです。それに
  エポキシ樹脂を浸透させていく、ウエスト工法
  と呼ばれるものです。


















  木の上にはグラスを貼って、バキューポンプ
  で真空引きして圧着していきます。それで、
  表面はFRPとなり、最後は塗装します。これで
  メインテナンスは、木造だからと言って、特別
  な事が必要では無い。FRP船と同じです。













結局、木造である事のメリットを維持しながら、最新技術でもってメインテナンスを容易にし、その工法の特性から、カスタム建造に向いている。ですから、自分だけの特別の一艇を造りたい方向けです。考えてみたら、今日のFRP艇ではコア材を使っているわけですから、それが木材になっていると考えれば、工法的にはそう違わないのかな? と思わないでもありません。とは言っても内側が違いますが。

木造艇をお勧めしたいわけではありません。ただ、欧米では、今でも多くのヨットやボートが木造で建造されています。それは需要があるからこそできる事ではありますが、オーナー側は何も伊達や酔狂で購入しているわけでは無く、ちゃんと木造の良さを知ってこそであり、もちろん、造船所側も技術を進化させ、最新のパフォーマンスを可能にしているからこそであります。

木造はもはや、昔のノスタルジックなイメージではありません。ところで、昨年、トルコのマリーナに行きましたが、数多くの木造艇が浮かんでいました。ただ、カスタムですから、ヨット文化が深く根付いているが故だと思います。日本も、いつかは、そういう時代が来れば良いなと思います。それには、動かないヨットが多いうちは無理でしょうから、今は、今あるヨットがもっと動く様に、いかなる使い方であっても、使用頻度が高くなるようにと願っております。


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