第四十四話 キャビン装備の充実


      

最近のクルージング艇を見ますと、増々、キャビン内の装備が充実してきました。特に、サイズが大きくなればなる程に、様々な便利な装備が備えられ、まるで自宅に居るのと変わらない装備がなされるようになりました。 これはクルージング艇に求められる発展の自然の流れではないかと思います。

広いキャビンは言うまでも無く、温水、冷蔵庫、冷凍庫、ガスコンロ/オーブン、電子レンジ等々、大きなサイズになると、メインサロンではボタンを押したら、テレビが棚からせりあがってきたり、オーディオはもちろん、大きなソファーとテーブル、ワイン収納庫があったり、いろいろ、それに2キャビン、3キャビンなんてあります。さらに、特に最近の傾向ではないかと思いますが、従来、ヨットのキャビンは潜り込む感じで、採光があまりなかったのが、最近では、窓が広くとられ、大きなヨットではハルの横っ腹にも窓が設けられ、キャビンは外光で、かなり明るくなりました。

これらを存分に活かすには、1日、ちょっと乗っただけでは活かせません。やはり、泊まりを前提にした装備の充実と考えるのが自然ではなかろうか? つまり、造船所はオーナーに快適な泊まりを前提としているのだと思います。言うならば、まさしく、動く別荘です。ですから、こういうヨットの使い方としては、時々でも、家族や友人達と、どこかにクルージングに行って泊まる、行かなくても、マリーナで泊まる。そういう快適さを満喫して欲しい。つまり、動く別荘として使うのが、最も相応しいのではないかと思います。できれば、連泊して欲しい。

どこかにクルージングに行って、泊まって、事情によっては、そこにヨットを置いて帰る。次の機会に、その、マリーナに行って、その続きをする事も可能です。そういう使い方を考えれば、ヨットはどこのマリーナに居たって良い。次の旅を必然的に計画するきっかけにもなります。ホテルの心配は無用です。ただ、食事だけは必要ですから、できれば、これも自炊? 自宅での自炊とは違って、それも楽しむ事が必要だと思います。

エンジンで走って、行った先でセーリングを楽しんだり、現地の散策、泊まって楽しみ、誰かとの出会いを楽しみ、これぞクルージングという旅では無かろうか? そう言えば、ある方、小さなクルージング艇でしたが、普段はデイセーリングを楽しみ、年に1度か2度、1ケ月以上かけてのロングクルージングを楽しまれた。でも、こんなのは、仕事現役では難しいかもしれません。でも、最近はテレワークなんてのもあります。船内に携帯電話とパソコンと、それがネットに繋がる環境を造れば可能性は高まります。

クルージング艇の使い方はそれぞれで、程度問題もありますが、もっとキャビンとその装備を活かす事を考えた方が良いかもしれません。欧米人は既に昔からそうやって楽しんできました。旅の航程、現地での楽しみ方、それに加えて、泊まって如何に楽しめるようにするか? 泊りは当然だぐらいに考えても良いのでは無いでしょうか? そういう快適、充実装備なのですから。

上の写真はTES28という28フィートのクルージング艇です。このサイズでも、そこそこのキャビンスペースを確保していますし、少人数なら長旅だって使えます。クルージング艇というのは、そういうヨットなのではないかと思います。最近は、引退後に田舎暮らしをする人が増えているそうです。だったら、それをヨットと考えられないでも無い。それにヨットだったら、行きたい先に移動できるのですから。何事も考え方次第ですね。


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