第八十話 クルーザー


      

ひとくちにクルージング艇と言っても種類がありますが、一般的な日本の沿岸を旅するなら、所謂、パフォーマンスクルーザーをお薦めしたいと思います。旅は何日も陸に寄らずに走り続けるロングもあれば、沿岸であっちこっち寄りながらの旅もあります。そして多くの場合は後者になるのではないかと思います。

ロングの陸に寄らない旅は、帆走性能というより、その長旅でもより身体が疲れないとか、鋭敏な反応より、多少は鈍い程度の方が良いし、それに積載する荷物も多くなるだろうから、排水量も重めの方が、積載量の多さで性能ががらっと変わったりしない。

でも、大抵は沿岸の旅で、あっちこっち寄りながら楽しむという使い方をされる事が多いかと思います。それなら、多少は足の速いヨットの方が良いのではなかろうか?それがパフォーマンスクルーザーです。こういうジャンルのヨットでは、内装をよりシンプル化して、より速いを狙うのもあり、これはどちらかと言うと、レース寄りかもしれません。或は、その中でもクルージング艇の様に、キャビンを造り込んだのもあります。このタイプのメリットは、旅もするけど、日常的には近場でセーリングを楽しんだり、もちろん、レースに参加しても良く走るので面白い。

これらのパフォーマンスクルーザーは、時にロングに出る事もできます。ただ、純クルージング艇よりもレスポンスが高かったりしますから、それなりの操作をしてやる必要はありますが、でも、オートパイロットを使うという手もあります。ただ、燃料タンクの量によっては、予備燃料を準備する必要はあるかもしれません。

クルージングを楽しむと言っても、いろいろですが、多くの沿岸の旅を中心に、普段使いはセーリング、ピクニック、たまにレースという多くの方々の用途には、やはり少し足の速いパフォーマンスクルーザーの方が使い勝手は良いのではないかと思います。この手のヨットはSADRで言えば、23前後から25ぐらい、内装をシンプル化したもっとスピード狙いは25オーバー、大きなサイズなら、造り込んだキャビンのタイプでも、25ぐらいあります。

写真はスウェーデンのアルコナ465です。内装はかなり造り込んであります。しかし、それでも、SADRは29にも及びます。サイズの大きなヨット程、軽量化の効率が高いからできる事ではありますが。特にこのヨットはそうです。でも、この造船所のニューモデル、アルコナ345にしても、SADRは25に達しています。



こういうパフォーマンスクルーザーはクルージングに良し、セーリングも良し、レースに良し、家族とのピクニックにも良し、さすがにシングルハンド想定ではありませんが、二人居れば充分走らせる事ができる。そうい総合的な判断からして、レースをしませんからクルージング艇でというより、パフォーマンスクルーザーという選択肢がある事、そして多くの方々の使い方にはお勧めであります。

今日、サイズの大きなヨットにしても、電動ウィンチがあり、スラスターがあり、場合によってはメインファーラーにもできます。ただ、パフォーマンスを維持する為にも、ブームファーラー設定がお薦めです。
さらに、内装をシンプル化した艇もありますが、これはどちらかと言うとレース志向が強くなります。それでも、クルージングにも充分使える。旅しかしないなら、エンジンで走るなら、こういうヨットのメリットはあまり意味を成さないかもしれませんが、でも、普段に近場をセーリングして楽しむという事も念頭に置いて頂ければと思います。舵を切る時のフィーリングなんか、全然違います。

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