第五十八話 ランチとメインテナンスを楽しむ日


      

日本には年間を通して、たくさんの祝日が設定されていますが、その中に、1回か2回、メインテナンスの日を設定したら良いんじゃなかろうか?むしろ、そうすべきかもしれません。それも、メインテナンスを楽しむ日です。

本来、メインテナンスは修理を意味すると言うより、グッドコンディションにして、それを維持していくという事だと思います。修理は突発的に発生しますが、そういう修理をより少なくする事にも繋がりますし、何しろ、自分のヨットの事が良く解る様になります。

天気が良くて、気持ちの良い日、セーリングするばかりでは無く、メインテナンスを楽しむ日として、グッドセーリングを想像しながら、船内の不要物を撤去したり、掃除をしたり、様々な部位を点検して潤滑剤を塗布したり、メインテナンスの日と決めていれば、案外楽しみながらやれるものです。この際、ついでに、お弁当持って、ランチも楽しむ日としたいですね。のんびりやれば良いと思います。

例えば、古く、硬くなって、汚れまくったハリヤードを1本交換すると、とっても使いやすくなります。見た目も良くなる。さらに、そのハリヤードがどこを通っているかが、頭で理解するだけでは無く、実感できます。ここがポイント、気分も少し良くなるし、もしロープ類を全部交換すると、かなり見栄えも良くなる。切れそうだから交換するというよりも、使い易くする、気分が良くなるというメリットです。

それにジブハリヤードだったら、セールを下ろして交換しますから、ファーリングがどうなっているかも分かります。そんなこんなをしていると、全体が見えてきて、いろんな応用も効くようになると思います。それはグッドコンディションのみならず、セーリングに対しても、柔軟な対応をする事ができるようになる。

ブロック類、ウィンチのクリーニングやグリスアップ、等々、一つひとつは難しいものではありません。メインテナンスの日と決めていると、面倒くささも感じないと思います。そして、メインテナンスの目で見ていると、いろんな処に気付けるようになります。それがまた良い気分にしてくれる。感覚的にもメインテナンスの目が養われていきます。

その結果、操作が楽になたり、滑らかにになったり、扱い易くなったり、それでセールフィーリングも良くなる。そうなると、その状態を身体が自然に感覚として記憶していきますから、僅かな変化でも感じ取る事ができる様にもなりますし、修理を未然に防ぐ事にもなっていくと思います。グッドメインテナンスはグッドセーリングに繋がる。そして、そのグッドセーリングを維持したくなり、それがまた、グッドメインテナンスにも繋がります。この循環に入ると、メインテナンスに楽しさを感じるようになれるのでは無いでしょうか?

但し、メインテナンスにもノウハウがありますから、解らない事は業者にでも聞いて、自分でできない事は頼んでも良いし、ただ、その都度、理解をしていくと、ノウハウの蓄積ができ、今後、自分でできる事が増えていきます。のんびりやれば良いし、それに慣れていきますと、効率良くできる様ににもなります。

ところで、チークデッキはメインテナンスが面倒くさいと一般的に思われていますが、でも、クリーニングすればとっても綺麗になりますし、これは案外楽しめるかもしれないと思えるようになるかもしれません。これにもノウハウがあります。チークの繊維と平行に磨きがちですが、できるだけ直角に磨いて繊維と繊維の間の柔らかい部分をできるだけ削らないようにする。そこにゴミが溜まります。台所のスポンジの裏面に付いた緑の少し荒い部分がありますが、これなんかで磨くと良い様です。

あるオーナーは外装チークに自分でニス塗装なんかされます。それも毎年やられます。大変だと思われるかもしれませんが、案外、本人は楽しんやられます。塗装して1年後ではニスは綺麗なままです。だから古いニスを剥がす必要も無く、表面を軽くサンディングして2,3回塗装。そうすると、綺麗がずっと続きます。気持ち良いです。ほったらかして数年経つと、割れてきますから、こうなると全部剥がしとなって、これは大変な作業になりますから、その前なら、オーナーでもやれる様になります。

メインテナンスは決して面倒くさい、煩わしいものではありません。誰もがセーリングのノウハウを重視しますが、それと同じぐらい、メインテナンスのノウハウも重要だと思います。年に1回か2回、メインテナンスを楽しむ日と決めては如何でしょうか?メインテナンスを楽しんでやれる様になったら、ヨットライフに間違いなく充実感を感じてくるかと思います。セーリングを自由自在にするコツは、案外、メインテナンスにあるかもしれません。何しろ、自分のヨットに精通するわけですから。

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