第九十三話 ハウツーだけがセーリングじゃ無い


      

知識を学び、技術を習得して行く。長い年月をかけて、これらを自分のものにしていくのがセーリングの正統派かもしれません。しかし、それだけじゃあ無い。知識も技術も忘れ、何も考えずに、ただその日のセーリングを感覚のままに味わってくる。良いも悪いも無く、ただ味わってくる。ひょっとすると、それが純粋なセーリングの味わいかもしれない?

頭脳的セーリングというのは知的ゲームとして成立する面白い行為です。これには程度の差はあれ、常に集中と良い意味での緊張を伴い、セーリングしているその場で面白さを感じる事ができます。そして、長い目で見て、進化するという別の面白さも味わう事ができます。舵に注意を払い、セールを観察し、身体は船体の動きを敏感に感じます。

ただ、セーリングはこういうハウツー的なものとは別に、無心で何も考えずに、完全な感覚だけのセーリングというのもあります。これは、楽しさとか面白さとかとは、また違う次元の感覚ではないでしょうか?上手いも下手も無く、速いとか遅いとかも考えない。ただ、味わうだけのセーリングです。

実を言うと、こちらの方が良い気持ちかもしれない。何か得たいと思ってないし、快走求めていないし、目的も無い。完全なリラックス状態で、完全に受け身の状態です。頭脳セーリングが動なら、こちらは静。これが心から楽しめる様になったら、こっちの方が気持ち良いかもしれません。

デイセーリングには目的が無いと言った人が居ましたが、目的は本当に必要だろうか?誰もが、目的があれば頑張れると言います。それで頑張って、目的達成して、その目的に対する頑張りという体験ができます。これは面白いという体験になると思います。それはそれで良いのですが、その中には、自分の思惑が入っています。それが面白さを創る事になるのですが、一方、セーリングを思惑の中に限定する事にもなると思います。

その思惑を一切はずして、ただ受け身のセーリングというのもありではないでしょうか?もちろん、操作は必要ですが、でも、自動的、反射的な操作で、いちいち考えて操作するわけじゃない。まあ、できるだけ受け身です。考えない、期待しない、ただ味わう。これが案外良い気分。否、良いとか悪いとか、楽しいとか、そういう気分じゃない、別次元の気分。これもデイセーリングにはありだろうと思うのです。それには目的は無い方が良い。ただ、セーリングしながら、何か違う事考えてたら味わえませんが。

セーリングってのは、ハウツーだけの遊びじゃ無いんだな〜と思います。たまには、何も考えずに、ふらりとセーリングしては如何でしょう?何にも無いけど良い気分を味わえるかもしれません。セーリングという純粋な味わいがあるかもしれません。



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