第九十四話 デイセーラーのイメージ


      

約30年程前、ある男が、速くて、独りでも簡単に操作できるヨットが欲しいと願った。それでデザイナーが試行錯誤の末、できたのが今日のデイセーラーの始まりです。その前からデイセーラーはありましたが、それまでのデイセーラーとは根本的にヨットに対する捉え方が違っていました。

今日、デイセーラーはクルージング艇より遥かに軽く、レーサークルーザーよりもさらにもっと軽く建造されています。そのお陰で、小さなセールなのにも拘わらず、レーサークルーザーと同等の、否、それ以上のパフォーマンスを得る事ができる。しかも、シングルハンドです。

例えば、某クルージング艇の33フィート(船体長)は排水量6,300kg、それが某レーサークルーザーになりますと、同じ33フィート(船体長)で排水量は4,300kgと2,000kgも軽くなります。さらに、デイセーラーでは軽くなって、例えば写真のフライヤー33(船体長)だと2,700kgですから、さらに1,600kgも軽くなっています。クルージング艇に比べたら半分以下です。

もちろん、モデルによって前後はありますが、イメージとしては、デイセーラーが最も軽いという事です。そして、この各排水量に対してのセール面積ですが、クルージング艇では63.5u(106%ジブ)で、レーサークルーザーは65.2u(106%ジブ)、そして、デイセーラーでは49.6u(106%ジブ)です。比較する為にセルフタッキングでは無くジブにしました。

さて、これで見ますと、クルージング艇とレーサークルーザーのセール面積はあまり差がありません。若干大きいくらいです。でも、排水量が圧倒的に違いますから、SADRで見れば、クルージング艇は18.9に対してレーサークルーザーは25.1となり、その差は圧倒的です。速くする為にはセール面積を大きくするより、排水量を軽くした方が効果的です。そして、デイセーラーを見ますと、SADRは26となります。

つまり、デイセーラーは排水量が軽い為、最も小さなセール面積にも拘わらず、レーサークルーザーと同等もしくはそれ以上のパフォーマンスを得る事ができています。しかも、それをシングルハンドで容易に操作できる。もちろん、各ジャンルの各モデルによって、多少は異なりますが、全体イメージとしてはそういう事になります。

つまり、デイセーラーはまさしくセーリングヨットそのものです。セーリングを楽しむ為のヨットとしてデザインされており、レースのレーティングなんかに縛られず、クルージング艇のキャビンの広さに縛られず、スピードのみならず、セーリングの滑らかさやレスポンス等、セーリングから得られる様々なフィーリングを楽しむ事を第一として建造されているヨットです。

このヨットでレースに出たらレーティング上、不利になるでしょう、クルージングするにもロングを旅する程キャビンは広く無いでしょう、でも、いつでも自由自在にセーリングを楽しみ、ショートの旅までなら気軽に楽しめるのがデイセーラーというヨットです。つまり、デイセーラーはエブリデイヨット、日常、近場に重点を置いたヨットです。今朝起きて、良い天気、ちょっとセーリングに行ってくる。一緒に行く?ぐらいの気軽さです。



次へ       目次へ