第7話 独り言

キャビンがでか過ぎるといつも言ってるが、残念ながら市場をリードするのは日本の
造船所では無い。主な市場は欧米にあり、彼らがどんな動きを示すかによって、造
船所の造るデザインが変わってくる。あるいは、ユーザーがリードするというより、造
船所がリードするのかもしれない。造船所がどんなヨットを提案するかによって、ユ
ーザーの動向も変わるのかもしれない。欧米でのチャータービジネスのマーケットは
非常に大きいと聞く。そのチャータービジネスの動向がリードするとも考えられる。
考えてみれば、大手の造船所と言えども、年間建造艇数は2,000から3,000艇
ぐらいだろう。そうすると、世界の大手の数社を計算しても合計で20,000強、
それに小規模の造船所等々を入れても多くて30,000艇ぐらいだろうか。いずれに
しろ、これが世界のマーケットなのだから、仮にこの倍にしてもたいした数では無い。
という事は、チャータービジネスのマーケットがどう動くかは、造船所各社にとっては
ビッグビジネスなのである。価格が安くて、みかけが良く、キャビンが広いヨットという
のはチャーター向けには良いだろう。

ただ、個人のユーザーという次元で考えると、造船所がチャータービジネスに目を向
ければ向ける程、価格面では有利になるものの、不満も残るだろう。そういう人達は
現に、小規模造船所に向かっている。多少価格は高くなるものの、品質は良いし、
場合によっては個人の好みも多少なりとも反映してくれる。ある大手の造船所では
造船所の指定したオプション以外は、いかに簡単なものでも一切受け付けないと聞く。
その簡単なひとつの作業が製造工程に入り込む事を嫌うからである。

ヨーロッパのある造船所は、こんな言い方をしていた。”あのヨットはチャーター用ヨット
だ、うちのは個人オーナー向けを作っている” 何も心配は無い。造る側も人間ですか
ら、そういう需要にもちゃんと対応する造船所はある。

あるアメリカ人と話していた時だが、その人は、あれは湖用、あれは沿岸用等々の話
をしていた。向こうではちゃんとその辺を理解したうえで購入するらしい。そんな話だ
った。自分は外洋に行くわけじゃないから、これで良いとか、そういう事がちゃんと理解
されているのは良い事でしょう。ヨットは場合によっては命がかかっているのだから、
その辺は日本はあいまいです。ただ、基準を設けるのは難しいでしょうね。彼らはどんな
基準で判断しているんだろうか。あるヨットを見ました。太平洋を横断したらしい。だから
このヨットは外洋艇ですと言えるか?良く見ると歪がきている。

まあ、そんな事より、どんなになったら、みんながヨットを本当に楽しいと思うようになるの
か、その為には、やはり乗ることじゃないかと思います。セーリング自体が楽しいと思う
事ではないかと思う。それが土台にあれば、ヨットはもっともっとひろがるんじゃないかと
思いますし、その余地はなんぼでもある。

住み込む人も居るだろう、でもそれはまれ、キャビンライフを別荘代わりに使う人もいるだ
ろう、でもそれはまれ、外洋に行く人も居るだろう、でもそれはまれ、大半はヨットもってて
使わない人達なのだから、彼らに、近場でのセーリングの楽しさを味わってもらいたい。
そうすると、眠れるヨットは目を覚まし、しょっちゅうマリーナを出てはセーリングして、セー
リングすると、いかにすれば良いセーリングができるかという話題になり、そうすると、そう
いうヨットが増えてくる。こうなりませんかね?

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