第三十二話 ヨットは憧れ



      


かつて、ヨットはみんなの憧れだった。多くの若者がクルーとしてヨットに乗り込んでみたり、友人達と共同で買ったり、兎に角、何とかしようという気運が高かった。当時、マリーナは空きも無く、保管場所探しでも苦労した。それでも何とかしたかった。そんな時代もあったんです。

ところが、今は、マリーナの空きが出てきて、係留場所探しの苦労は無い。しかも、昔に比べたら係留費用も安くなっている。にも拘わらず、今度はヨット離れが起こってきた。世の中、なかなか都合良くはいかないものです。

それは兎も角、やっぱりヨットを広げたい。もっと売りたい。もっとヨットの事を知ってもらいたい。セーリングの面白さを味わってもらいたい。何も2倍、3倍にしようという事でも無く、毎年少しづつでも上昇傾向になれば良い。それにしては圧倒的に露出度、情報量が足りないな〜。

新規参入者を増やすにはどうしたもんか?否、その前に、新規参入より、現オーナーが一生懸命遊んで、今あるヨットを最高に楽しむ事の方が重要だろう。オーナーが面白さを感じたら、必ず周辺に伝播する。全国のオーナーが楽しめば、それだけ広がる。それが最も効果的なんじゃなかろうか?そうしたら、舵誌が売れるようになるかもしれない。そうしたら、別のヨット雑誌も出現するかもしれない。そうしたら、露出度も上がって、情報量も増えていく。

問題は、現オーナーが楽しんでいるかという事になる。でも、マリーナを眺める限り、大半はそうは見ない。何しろ、動いていない。昔は、マリーナはリゾート地だとか、マリーナの在り方とか書いた記憶がありますが、そんな事はどうにもできないので、オーナー自身が主体的にヨットをもう一度見直して、楽しむ方法を考えて頂ければと思います。

何故乗らないのか? それは何故乗るのかという事を考えれば解る。多分、ヨットに乗り始めた頃、みんな夢中だったんじゃないだろうか?兎に角、乗れるようになりたいと思った。その為には学びもしたし、練習もした。ところが、ある程度乗れるようになった処で、クルージングに行きたいと思った。ところが、現実はそうしょっちゅは行けなかった。また、行けば時化に出会った事もあるだろう。何かのトラブルに遭遇した事もある。或いは、レースに出る事もある。でも、夢中になる人も居れば、大半はそうでも無い。

かくて、ヨットは滅多に動かなくなった。夢はある。でも、現実は時間の制約もある。たまに、宴会したり、泊まったり。でも、そう多くは無い。じゃあ、どうしよう。

それで、そんな停滞感を感じたとしたら、初心に帰って、もう一度セーリングを見直してみてはどうだろう。あの、夢中だった頃の事をもう一度やってみる。そう、デイセーリングであります。今度は、初心者じゃないから操船はOK、だから、少し上のレベルのセーリングはどうしたら良いか?もう一度、学びます。レースしなくたって、セーリングに詳しくなって良い。その方が面白い。何度も言ってきたが、セーリングはレーサーの為だけにあるわけじゃない。セーリングは全てのヨットの為にある基本的能力であり、ヨット最大の魅力である。


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