第18話 精神論

ある方が、最近は精神論の話になってきたねと言われました。振り返って、書いてきたことを少し
読んでみますと、確かにその通り、ヨットの事より心とか意識とか、そういう話が多くなってきてい
ます。もっと、面白い話題を取り上げていきたいと思うのですが、まあ、これも流れのひとつ。

ただ、ヨットも他の何かをするにしても、究極的には精神に関わってくる。何をするか、何を持つか
も大切な事ですが、もっと大切な事は、どういう姿勢でするかではないでしょうか。ヨットが大きか
ろうと、高級だろうと、小さかろうが、ぼろだろうが、一生懸命遊んだ人が最も楽しめると思います。
技術や知識、経験、そういうものがあろうと、なかろうと、何でも楽しもうと試みる人は誰よりも充実
した時を過ごせると思うのです。良い道具はそれだけ良い物をもたらす。しかし、持っている人が
それを充分に味わう姿勢が無ければ、良いも悪いも無い、それ以前の問題となります。

私はいつも気軽さを持つ事を言っています。いつでも、ちょっとあいた時間に出そうと思える気軽さ
です。でも、遊ぶ時は一生懸命遊ぶ。一生懸命になれば、良い経験もあれば苦い経験も出てくる。
うわべだけの快楽ではそうはならないかもしれませんが、一生懸命遊べば、いろんな事を経験する
でも、それが充実感をもたらす事になる。スポーツでもそうです。バスケットでも野球でも、サッカー
でも、敵が居て、自分を邪魔する。一生懸命やって、敵をかわして得点できる。失敗することもある。
でも、敵が、さあどうぞ得点して下さいとスムースに、いつも得点させてくれるなら、こんな面白く無い
スポーツはありません。ヨットも同じ、良い時もあれば、波が高く、風が強くて緊張感が高まる事もあ
る。或いは、風が全く無く、動かない時もある。これらを全て含めて、一生懸命楽しむ姿勢であたれば
ヨットであろうと、何であろうと、楽しく無いわけが無い。人生も同じだと思うのです。全てが楽に、思った
通りになれば良いと願います。私もそうです。でも、もし、本当にそうなったら、人生はスムースですが、
充実感も何も無い。きっと、つまらない人生だと思うようになるでしょう。生きているだけでは満足できな
いのです。時化の中を走ると、つらいものがあります。でも帰ってきたら、それを振り返って、ああでも
無い、こうでも無いと自分の中で気持ちが動く。でも、凪の中を帰ってきたら、心は動かない。
誰でも、時化の中を走りたいとは思わない。私もできるだけ避けたいのです。でも、結果、そうなったら
仕方が無い。受け入れるしか無い。良いも悪いも全部そのまま受け入れて、その都度一生懸命やるの
が最も充実したヨットライフを満喫するコツではないでしょうか。時化の時に嫌だ、嫌だと思ってばかりで
は何の解決にもならない。嫌だと思う気持ちを抑えて、一生懸命対応する。楽しいというのは、良い時
だけを指すのでは無く、全てをトータルで楽しめるようになると良いなと思います。そうすると、本当に良
い時が輝いてくる。全てが輝いてくる。一生懸命遊びましょう。

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