第九十八話 日本人と欧米人の遊び

日本人は勤勉とは昔から言われてきた事です。その勤勉さは仕事だろうが、遊びだろうが、あらゆる処に発揮される。その勤勉さ故に、日本人は遊び下手と言われるのかもしれません。でも、そんな事はほっといてくれと言いたい。

あるアメリカ人の話、45才ぐらいまでに、たっぷり稼いで、早期に引退したいと言う。それに対して、日本人は、できれば体が動くまでは仕事をしたいと言う。それぞれが仕事に対する価値観が異なる。遊びに対する価値観も違うだろうし、人生観が違う。 

欧米人にとって、遊びとは、労働をしていない時間、全てが遊びの範疇ではなかろうか?それなら何もしないで、一日中ビーチに寝そべっているのも解る。長い休暇があるからそんな事ができるのとは違う。労働をしないという事、それが即遊びの範疇ではなかろうか?だから、彼らは、コクピットで一日中おしゃべりして過ごせるし、それがしょっちゅうでもできる。それが遊びなのであります。
彼らにとって、労働をしていないOFFが重要な事なのではなかろうか?

ところが、日本人は違います。遊びは遊びとしての何かをしないと、遊びとはならない。それは日本人の勤勉さも関係しているのではなかろうか?だから、コクピットで一日中おしゃべりする事もできなくはないが、それが、しょっちゅうでは遊んでいる気にならないのではなかろうか?

ゴールデンウィークにずっと家に居る事自体が、もう遊びでは無い。どこかに行って、何かをしないと遊びとは言えない。せっかくの休みなのに。どこにでも充実感みたいなものを求めるのが勤勉ならではの日本人ではなかろうか? 仕事でも遊びでも。 だから、仕事でも良いんだが、遊びでも、何らかの満足感を得たくなるので、何もしない事が無駄に思えるのではなかろうか?そこいくと、欧米人は、労働をしていない事がすなわち遊びであり、そこに特別な何かをする事もあるが、特別な何かが必ずしも、日本人程は必要としないのではなかろうか?

という事で、遊びに対する価値観の違いがある。とするなら、我々を満足させるには、やはり、何かをして、そこから充実感なりを得られる方向に持っていく方が良いと考えます。マリーナに行って、コクピットでおしゃべりも楽しめるが、それだけでは満足できなくなる。ヨットに泊まって過ごすのも良いが、それだけでは満足できない。労働をしないという遊びと、何かをする遊びとは違う。日本人の遊びはもっと積極的なのであります。でなけりゃ、ゴールデンウィークに、どこ行っても混雑するのは解っているが、それでも、家にずっとは居られない。それは遊びでは無いから。何かをする事が必要になる。

それで、そういう目でヨットを見ます。なる程、マリーナに保管されるヨットの数に対しては人の数は少ない。ゴールデンウィーク、最高の天気の良い時でも、それ程でも無い。もうそこには、特別な何かをする事が無いから。たま〜に温泉旅行に行くとか、たま〜に、どこかに遊びに行くとか、そのたま〜にする何か程度になっているのではなかろうか?

それはそれで良いとしても、ヨットというちょっと特別な遊びにご縁があったわけですから、できれば、日本人らしく、そこに何らかの充実感を求める遊び方をしても良いのではなかろうか?その方が日本人として遊びになる。勤勉に遊ぶを、実行して、充実感を得ようという事であります。勤勉で何が悪い。それが日本人なのであります。

それで、最も手軽にできる事が、いつも言うとおり、セーリングなのであります。それも、ただセーリングでは無く、徐々に、上手くなろうとするセーリングなのであります。ある人はデイセーラーを捕まえて、ピクニックボートだと言った。それは大きな間違い、デイセーラーを理解できていない。ピクニックにするかどうかは、乗り手が考える事、レーサーだって、乗り手がピクニック気分で乗れば、それはピクニックボートになる。デイセーラーはセーリングボートなのであります。乗り手次第で、その性能をどう扱うか次第なのであります。

セーリングを勤勉に遊ぶなら、あらゆる処に、学ぶべき、それは同時に遊ぶべき事がある。仕事にも同じように、そこに上達や発見や充実感がある。しかし、仕事は利害がつきまとう。しかし、遊びはそれが無い。でも、内容的には、やはりそこに上達や発見があってこそ、日本人にとっての充実感があり、それを遊びと呼ぶのは、その行為に利害が無い行為だからではなかろうか?

だから、その行為に、利害が無くて、上達や発見があるなら、それが日本人にとっての本当の遊びになるのではなかろうか?それをデイセーリングに求めてはどうかと、いつもお薦めしております。

文化の違い、民族の違い、人生観の違い、いろいろあるけど、我々は西洋文化を吸収しては、咀嚼して、我々のスタイルにアレンジしてきた。それができないと文化として定着はしない。ヨット文化に対しては、今はその過渡期だと思います。西洋文化を取り入れて、その良さ、面白さを取り入れつつ、我々のスタイルにアレンジしてきた。さて、ヨットの良さ、面白さは日本人の目で見てどこにあるのか? それを自分流に遊ぶ。その過渡期に、デイセーリングを是非試して頂きたいと思っています。

そこに面白さ、発見、充実感を得てこそ、自分流の楽しみ方が生まれてくる。デイセーラーは日本人の為のヨットではなかろうかとさえ思います。

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