第九十四話 維持

ヨットは乗るばかりでは駄目で、いかにいい状態を保つかという維持も考えなければなりません。車のように短い時間で買い替えなんかしていきますと、そう考えなくてもいいかもしれませんが、考えてみたら、車と違って、ヨットは常に過酷な状況にあります。

まず、第一に車のように毎日は乗らないし、しょっちゅう潮にさらされ、乗れば、悪路を走るような過酷な状況で、保管状態から走る状態まで、厳しい状況にあります。しかも、車より買い替え頻度は少なく、長く乗るものです。

という事は、本来ならば、車以上の整備をしてやらなければならない。しかし、まあ、ヨットは優秀でありまして、そんな過酷な状況にありながら、決定的ダメージに至る事は少ないのであります。

とはいえ、ヨットを快適に乗る為には、整備は欠かせない。しかし、それにはコストがかかる。よって、それをどう考えるか? コストを抑える為には自分でするしか無い。しかし、これにはもうひとつのメリットがあって、自分のヨットをより良く知る事ができる。できれば、こうしたいものです。コストの為だけでは無く。

でも、複雑な事になると、自分では手に負えないかもしれないし、また、でっかいヨットは装備もたくさんあって、なかなかオーナーが全てを把握するには難しい。もちろん、可能なのですが、相当時間をヨットに関わっていないと、すぐに忘れちゃうんですね。

だから、でっかいヨットは専門業者に任せる方が良いかもしれません。でも、その状態はいつも聞いておく必要はある。どこかに行った時に、何かあって、対応の仕方も違ってくる。

オーナーが解っておられるなら、業者への指示も適格になる。だから、業者も動きやすくなる。何だか解らないが、変だと言われるより、どこどこに不具合があると言われた方が解りやすい。具体性が全然違います。

長年セーリングを楽しんでいく為には、セーリングの知識と技術だけでは不十分で、できるだけ維持管理についての意識も高めて行く必要はある。それらが解っていると、セーリングにおいても、メリットになる。わずかな船底の汚れが、セーリングに影響する事も感じられるようになる。

本当に詳しくなるには、相当の経験と勉強が必要にはなるが、でも、その意識を持つ事で、吸収は早くなる。また、そういう意識を持つと、何か不具合がある時までほったらかしという事は無くなるので、時々、床の下やソファーの下を覗いてみる。その時、私物が満載だったら、そういう意識が薄れて、面倒くさく感じてしまう。だから、私物もできるだけ少なく。だいたい、長距離のクルージングにでも行かない限り、一日に必要な物資はそう多くは無い。だから、無駄な物はいつも撤去して、その日必要な物だけにすると、点検が非常にしやすくなる。

船底に設置してあるバルブなんかは、開けっ放しというヨットは少なくない。すると、バルブが固着して、開閉ができなくなる事がある。普段、動かしていない証拠です。これって、いざと言う時には、非常に困ることがあるし、たったその為だけに、上架しないといけなくなる事もある。ヨットの取説なんかには、ヨットを離れる時は全てのバルブを閉じましょうとある。実際、これをやる人は少ないが、でも、毎回実行していると、こういうバルブの固着は無い。

バルブを毎回閉めるとなると、毎回床下とかを見なければなりません。それは良い習慣になる。それが億劫に感じなくなる事がメリットです。覗けば、何らかの汚れなんかがあると、きれいにしたくなる。すると、私物は減る。まずは、点検する習慣を持つ事ではないでしょうか?あっちこっち開けて、点検する。それだけでも、何かがあると早期発見になるし、どこに何があるかも解るし、自然にいろんな事が身につく。すると、自然にヨットが本当に自分の物になるかと思います。

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