第四十九話 旅とセーリング

ヨットでは両方できるので、つい混同して考えてしまう。しかし、これは別物として考えた方が良いのではなかろうか? 旅にはエンジンを使う事もあるし、もちろんセーリングする事もある。しかし、旅におけるセーリングは、どちらかというと移動が主たる目的になる。しかし、ヨットで言う処のセーリングには、もうひとつの目的があって、それはいかなるセーリングを味わうかという事です。

つまり、同じセーリングであっても、移動目的のセーリングと、セーリングそのものを味わうセーリングとは似ていて非なるものではないかと思います。

多くの場合、楽しむ範囲は日常のデイセーリングか、或は、レースか、沿岸のクルージングであろうと思います。その沿岸のクルージングにおいても、多くの場合でエンジンで走る事が多い。何故なら、暗くなる前にどこかに上陸したいから。行き先が見知らぬ場所なら尚の事。計算できるエンジン走行が重視されるし、セーリングでは時間はあてにならない事が多いから。もちろん、風向きが良ければセールを出す事はあっても、それが主体という事は少ないのではないでしょうか?

という事は沿岸のクルージングにおいては、大部分がエンジンを使う。となると、セーリングは移動目的にさえもあまり使われないという事になります。もちろん、外洋のロングで、何日も陸上に上がらないようなクルージングならば、殆どがセーリングでの移動という事になりますが、沿岸クルージングではそうはしないだろうと思います。

という事はセーリングをどう考えるか?

クルージングをしない時、日常の遊び方は近場でのピクニック的セーリングから真剣セーリングになり、この時こそセーリングを堪能できる。だとするなら、移動目的のセーリングは、あまり重視する必要は無いとも言えます。クルージングではキャビンの快適さや広さ、そして設備の便利さ等々を考え、セーリングはセーリングを楽しむ為にあると考えても良いのではないでしょうか?

そういう考え方の元、クルージングの範囲が近場で、せいぜい一泊か二泊程度であるなら、そんなに広いキャビンである必要性は無いだろうし、ましてホテルに泊まるならなおさらの事。或は、もっとロングの旅を考えるにしても、キャビンはもっと広くほしくなるでしょうから、キャビンはクルージングの長さを考え、セーリングはあくまでセーリングを楽しむためにある。

そういう事をいろいろ考えますと、日常にはハイパフォーマンスセーリングを楽しみ、クルージングに行く時はエンジンで走っても良い。行った先でデイセーリングを楽しむ事もある。そういう意味で、デイセーラーとハイパフォーマンスクルーザーに絞っています。セーリングを楽しむなら、性能が良い方が面白い。

デイセーラーは日常の移動では無く、セーリングそのものを楽しむ手段として、またハイパフォーマンスクルーザーも日常はデイセーリングを楽しむ。そして、クルージングにおいては、その距離によって、デイセーラーかハイパフォーマンスクルーザーか、という選択ができる。

つまり、敢えて申せば、純クルージング艇というのは、外洋ロングという事で無い限り、その必要性はあまり無いのではなかろうか? では、純クルージング艇というのは何を指すかという問題も残ります。このヨットは純クルージング艇ですとはどこにも書いていない。だから、そのジャンルという名前にこだわらずに、数値データから読み取るのが良いのではないかと思います。そのヨットの排水量、セールエリア、これだけでだいたい解る。どんなセーリングをデザインしているかが解ります。さらに、進んで、バラスト重量/セールエリア、I J P E と何%のジブ又はジェノアか(セールが標準仕様の場合) これらで、各セールの大きさが解る。そうすると、セーリングにおける操作が解る。

いずれにしろ、日常はセーリングを楽しむわけですから、デイセーラーだろうが、クルーザーだろうが、ハイパフォーマンスの方が面白いと考えます。

次へ       目次へ