第四十七話 メインテナンスの時代

資本主義の基本は生産と消費にあると思います。しかしながら、昨今の不況の影響で、物が売れない時代と言われます。おまけに、猫も杓子も節約だ、無駄を省け、政府も事業仕分けに取り込み、それが喜ばれ、もっとやれと号令がかかる。みんな、資本主義に反した方向を向いています。
それで、景気が良くなるのかな〜? 

まあ、このあたりは優秀な頭脳におまかせするとして、物が売れない時代なら、今ある物をもっと使うという事になりますが、そうだとするなら、これからは、既存のヨットをもっとメインテナンスして、長く使えるようにすると考えるのは当然かもしれません。新しいヨットを買うにしても、長く使える物を買う。長く使えるヨット、飽きのこないヨット、流行に左右されないヨット。そういう事になるでしょうね。

中でもメインテナンスは重要になります。20年で捨ててしまうか、40年、50年と使うか? 何も自分で50年使わないにしても、何人かの手に渡り、生き続けるヨット。そういう文化も必要ではないか?それなら、やっぱりメインテナンス。

ちゃんと建造されたヨットは、50年以上持つ。100年後もきれいに乗れると豪語する造船所もあります。しかし、すべてはメインテナンス次第。

残念ながら、長い歴史を持つ日本ですが、ヨットに関しては、古いヨットで、使い込んだ美しさを放つヨットは非常に少ない。でも、これからは、少し方向転換して、古いヨット、でも美しいヨットの出現が待たれます。何しろ、物が売れない時代なら、今ある物を大事にしなければなりません。そうやって、みんながきれいにすると、どれもこれもがきれいにメインテナンスされ、美しいヨットが増えていきます。これはひとつの文化の流れ。悪い事ではありませんね。

そうなると、多分、新艇も売れるようになるのではないか? ヨットに対する見方が変わるのではないか?メインテナンスが当たり前になったら、10年、20年、平気です。50年だって平気かもしれません。価値もこれまでのようには下がらない。すると、新艇を買うのにも買いやすくなる。価値が昔のようには落ちないのですから。すると、ヨットの本当の価値を見るようになる。使い捨てでは無いのですから。

メインテナンスをやりますと、そのヨットの造りが良くわかります。表面はきれいでも、裏が雑であったり、いい加減であったり、後々のメインテナンスがし易く造られていたり、メインテナンスは全く考慮されていなかったり、きちんと積層してあったり、簡単な接着だったり、同じ艤装品なのに、設置の仕方が違ったり、もういろいろあります。それらを広く、みんなが知るようになると、自分に合ったヨットはどれなのか、そういう事も良く解るようになるでしょう。

日本のヨットマーケットは非常に小さい。この先の拡大もあまり見込めない。ならば、全体の質、文化の質をあげて、少なくとも、ヨットやる人達が、本当に楽しめるヨットにする事なのかな〜と思います。ヨット人口は少ないけれど、みんな、心から楽しめる時代。外洋にいく人、レースを楽しむ人、セーリングを楽しむ人、それぞれが自分のスタイルで。物事には時間の流れが必要なんでしょうね

時の流れという事を見ますと、変なもので。この間まで重視してきた事が、今ではたいして考えないという事が良くあります。それは性能が良くなったからという事もありますが、ただ、みんなの気が変わったというのもあります。そこに何か特別の理由があるわけでもありません。何となく?
という事は、それはたいした事では無かったという事になります。一時的な現象にすぎなかった。

何十年も使うという事であるなら、ここは本物と一時的な物とを見分ける必要がありますね。よくよく観察するという事が必要なのでしょうね。大きなキャビンは本物か? 艤装の仕方は本物か?
メインテナンスは本物か? 何でも観察するという態度、それは本物か?

話は脱線してしまいましたが、メインテナンスは本物だと思います。

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