第五十二話  パワーボート 

パワーボートにご興味は無いかもしれませんが、時折、いろんな造船所のパワーボートを検索する事があります。それで、最近気付く事は、昔とは少し様相が異なる。

昔はみんなスピード、スピードと言って、殆どのケースで標準設定エンジンより大きなパワーを望まれる方が多く、心無い造船所では、物理的に搭載可能と判断すれば、要求通りのエンジンを載せる事もありました。それに伴い、エンジンメーカーもよりコンパクトなサイズで、よりおきなパワーを実現すべく開発が進んできました。トップスピード30ノットはほしい、いやいや、巡航で30ノットはほしいとエスカレートしていきました。

ところが、最近気付いた事は、エンジン2基では無く、1基掛けというボートです。それも、2基搭載できないような小さなボートでは無く、充分にサイズのあるボートです。そういうボートがちらほら出てきている。この事は、スピード一辺倒では無くなってきたという事になります。

高速で走りますと、プレーニング状態ですから、波が少しでもあると波に叩く。波に叩くと、ドスンドスンとすごい衝撃を受けます。しかも、スピードを出しやすい船底形状ですと、より大きな衝撃を受ける。波の衝撃を和らげるディープV船型とかになりますと、スピードが出ない、或いはスピードを出す為にはより大きなパワーを必要とします。従って、エンジン音は煩いし、波には叩くし、とずっと思ってきました。それもあまりボートを好きになれない原因のひとつでありました。

ところが最近のボートでは、1基掛けエンジンのボートが出てきた事です。スピードも欲張らずに、20ノット前後ぐらいが巡航です。トローラーではちょっと遅すぎる。かといって速いボートは疲れる。
クルージングには、20ノット前後というのは良いスピードかと思います。それに加えて、バウスラスターを搭載しているという考え方も良いと思います。

 

  このボートは典型的な米国東海岸のデザ
  イン。バックコーブ33というボートです。
  トラディショナルなデザインに少しモダンさ
  が融合したようなルックスです。

  こういうデザインは東海岸のニューイングラ
  ンド地方に共通したデザインで、クルージン
  グというスタイルにはフライブリッジタイプで
  無く、操船中もみんな一緒に居れる。エアコ
  ンもあれば、快適に操船ができます。
  残念ながら、こういうスタイルは何故か日本
  にはあまり入っていないようです。

この他、トゥルーノース、セーバーラインもこのようなダウンイーストと呼ばれるスタイル。

 

フィッシングスポットに素早く到達したいという用途ならば別ですが、クルージングを旅するというのには、こういう抑えたぐらいのスピードの方が良いと思ってきましたが、やはり、同じように考える人も居るのでしょう、そういうボートがちらほら出てきました。巡航20ノット出れば、ヨットの3倍から4倍。ボートですと、20ノットでもゆったり感が出ます。

理想的には、こういうボートとデイセーラーがあれば完璧です。旅はボートで、セーリングはデイセーラーで。これならボート嫌いも直るかも?贅沢の極み?

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