第三十四話 集中力

良い遊びの方法は集中力。いかに集中していられるかがポイントかと思います。釣りにしても、緊張感を持って集中し、ヒットすればこの上ない。ぼ〜としていて、釣れるより遥に面白い。集中して、開放される、そのギャップが大きいほど、面白さも拡大される。

そこで最も簡単に集中できるのは、のぼりギリギリの舵取りをしてみたらどうでしょう。セールを一杯引き込んで、上れるギリギリのところで、舵を取ります。ちょっと油断しますとすぐにセールの裏に風が入る。そのギリギリを狙うわけです。風がシフトしたら、それにも合わせる。兎に角、上れるだけ上って、走ります。これには集中力が必要ですし、緊張感も伴う。船体もヒールして、その緊張感の環境が整いやすい。これをできるところまで続けます。

緊張感を持って集中していますと、感覚はかなり敏感になってます。ちょっとした変化にもすぐに気がつくようになる。それが良いのです。そして、しばらく走った後、ちょっと落として、楽になりますと、ほっと一息、緊張感がほぐれてくる。この緊張と緩和は実に面白い。

いらいらした時、静かな音楽を、と思うかもしれませんが、ある人の話では、一旦は激しい音楽を聴いて、一旦緊張を高め、その後にゆったりした音楽を聴いた方が、緊張感がほぐれて良いらしいです。それと同じで、緊張感を意識的に高めて、その後緩む。それが良い。集中力も高まります。これが良い遊び。

遊びと言いますと、ゆったりのんびりと考えますが、それも遊びではありますが、それだけでは持たないかと思います。時折、こういう意識的な緊張感も必要でしょう。強風になりますと、否が応でも緊張します。集中せざるを得ません。但し、強風は意図的に風を弱める事はできません。かといって、緊張しっぱなしでも疲れますが、これも徐々に慣れていきます。すると、そういう中にも緊張を緩和する部分を造ることもできる。セールをリーフしても良い。

舵を持つ手に集中し、セールを見張る。多分、何も頭は考えていない。ところが、こんな何も考えていない状態でありながら、何か変化があったら、とっさに、何も考えなくても対応できる。人間ってのはすごいもんです。体中がセンサーになってしまう。

ある本によりますと、ハエは脳神経の周波数が人間より高いそうです。それで、人間の動きなんかはゆっくりと感じるらしい。それで、ハエを叩くのは難しいそうです。それだけハエは人間より緊張感が高いのかもしれません。普通の状態です。そこいきますと、人間はのんびりしてますが、それを故意に、緊張感を高め、脳の周波数を上げる。すると、それだけで、非常に鋭敏になる。

集中できるというのは、とっても面白い事かと思います。上手下手より、集中できるか否か、その方が絶対面白いと思います。言葉を変えれば、夢中になるという事です。それが面白く無いはずが無い。そういう乗り方をしますと、セーリング中のフィーリングが気になります。それを求めるようになる。そうなると、もっと面白くなる。そういう事が、人を充電します。良い遊びが、良い仕事も創造します。

ダウンウィンド、真後ろからの風というのも、舵取りには神経を使います。特に、波があったりしますと、へたするとワイルドジャイブの危険性もある。まあ、敢えてこういう走りをして、集中するのも良い。兎に角、舵取りのコースに集中して走る。セール形状についても、わずかなスピードアップしてもたいした事無いというのでは無く、それを試みる事で、ほんのわずかな変化も感じ取ろうとする事が、集中力であり、良い遊びを創造する手段ではないでしょうか?

そうこうしている間に、フィッシングの場合ならヒットした瞬間のような、何とも言えないようなセーリングに出会う事があります。最後に求める究極のセールフィーリング。グッドならぬベストフィーリング。緊張して、集中してセーリングしないと、これは解りません。上手下手でも無く、集中している状態が必要かと思います。

デイセーリングと言いますと、たいした事無いと思われるかもしれませんが、最も気軽に遊べる、しかも、最高の遊びが凝縮されていると思います。濃密な2〜3時間は尊い時間です。それが人生全体を充実させていくかもしれません。良い遊びは、グッドセーリング、グッドセーリングはグッドフィーリングをもたらし、グッドライフに導く。

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