第五十九話 比較して考える

文科系なりの理屈で単純な計算による比較を試みます。ある典型的なクルージングヨットとアレリオン28の比較です。厳密性は省いて、おおまかな比較です。

Aという28フィートのクルージング艇は、I=11.13m、J=3.30m、P=9.47m、E=3.28m
ジブセールの100%としてのセールエリアは11.13 x 3.30 ÷ 2 =18.36u メインセールは同じように PxE÷2=15.53u 合計で33.89uになります。

アレリオン28は I=9.14m、J=2.97m、P=10.06m、E=3.81mです。同じように計算しますと、ジブが13.57u、メインが19.16u、合計で32.73uとなります。この両艇のセールエリアはわずか、A艇の方が大きい事になります。Aはトップリグ、アレリオンはフラクショナルリグです。

今度は重量を見ます。A艇は3,765kg、アレリオンは2,565kgです。難しい計算はほっときまして、1uのセール面積にかかる負担で計算しますと、A艇は3,765kg ÷ 33.89u =111kg/u、アレリオンは 2,565kg ÷ 32.73u = 78kg/uという事になり、アレリオンの方が船体重量が軽いので、その分、セールが抱える負担が軽いので、その分速いと言えます。
また、A艇はアレリオンより大きなセールを操作しなければなりません。軽いというのは重要な要素ですが、同時に頑丈でなくてはならない。

また、A艇に150%のジェノアを設置すると考えますと、厳密に言えばセールエリアは50%より少し多く増えます。56%ぐらいでしょう。これで計算しますと、ジブのセールエリアが18.36uから
1.56倍にして、28.64uに増え、トータルセールエリアは 28.64+15.53=44.17uになり、重量3,765kgを44.17で割りますと、85kg/u、アレリオンの数値に近づいてきましたが、まだ1uあたりの負荷重量は7kg多い事になり、やっぱりそれでもアレリオンの方が速い。

速さの要素はまだあります。A艇の水線長は7.26m、アレリオンは6.96mですから、30cm程A艇が長いので、A艇の方が速い。バラスト比はどちらも約38%で同等です。しかしながら、水線から上の構造物は圧倒的にA艇の方が大きいので、スタビリティーはアレリオンの方が高い。つまり、風が軽い時、例え、A艇が150%のジェノアを持っていても、アレリオンの方が速いのではと思います。ただ、水線長30cmの差がどの程度影響するのかは解りませんので、断言はできませんが。多分。

強風になりますと、スタビリティーの関係で、A艇の方が先にリーフをする事になるでしょう。A艇はセールエリアがアレリオンより約35%も広い(150%ジェノアの場合)のですが、船体の持つスタビリティーは変わらないので、その分耐える限界が速く来てしまう。

その代わり、アレリオンはスタビリティーが高い代わりに、キャビンが狭い。通常、微風の時ははヒールしにくいですが、ある程度ヒールさせた方が効率は良い、風が強くなるとヒールし易くなり、ヒールさせすぎは良くないので、セールを縮める。速さの要素はたくさんあり単純比較はできませんが、ある程度のアイデアとしては参考にはなるのではと思います。

アレリオンは幅が狭いので初期ではヒールしやすい。微風時には都合が良い。それから風が上がってきてからは今度はキールが効いてきますので、それ以上のヒールはぐっとこらえる。幅の広い艇は幅でもちこたえますので、初期ヒールがしにくい。

でも、まあ、セーリングは上りだけではありませんので、一概にどっちが良いとは言えないかもしれませんが、でも、取り扱いのし易さ、スタビリティー、スピード、アレリオンに軍配があがると思いますね。但し、セーリングを主として考えればですが。そこに、通常のクルージング艇かこういうデイセーラーかという選択の基準的要素があるような気がします。

簡単操作で高性能を堪能するならデイセーラーですが、キャビンで遊ぶならクルージング艇です。
そしてもうひとつ単純でも、重要な要素は速さ。速いという事は結構クルージング艇の方にも重要な要素です。もちろん、レーサーの速さを求めているわけではありません。でも、ちょっと速いのが良い。それで、実際何ノットのスピードが出ているかという事もありますが、それより、速いという体感スピードは面白いという感覚に繋がる要素ですから遊びには重要です。でかいヨットで8ノット、9ノットと出ても、たいして感覚的速さは感じないかもしれません。それに比べて、小さいヨットや、海面に近いコクピットなど、そういうヨットは体感スピードが速く感じられるので、結構乗っていて面白さを感じます。これなど、どこに行くという何時ごろまでという、そういう事が無い乗り方には重要な要素ではないかと思います。実用的に使えば、何時頃には目的地に到着するという事で、絶対スピードが重要ですが、そういう目的が無い場合は体感スピードが面白いと思います。

まあ、そんな計算をしないでも、デイセーラーはキャビンよりもセーリングを堪能する事を優先しており、セーリングして面白いのはデイセーラーです。でも、キャビン優先を考えますと、通常のクルージング艇にはかなわない。デイセーリングの場合はキャビンよりもセーリング優先の方が面白いと思いますし、沿岸クルージングなら通常のクルージング艇の方が良いかもしれません。もちろん、どちらも両方できる。ただ、優先はどっちか?です。

両方とも見逃せない、割り切れないというなら、スポーツ系のヨットなんかお奨めです。という事で、当社ではデイセーラーとコメットを取り扱っている次第です。そして外洋までカバーするならセーバーです。

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