第九話 男はみんな冒険家

人は安定した生活を願いますね。将来の不安を何とか無くして、安定した生活こそが幸福を約束すると思っています。しかしながら、と言いますか、残念ながらと言いますか、そうはいかんのです。何故なら、男は根っからの冒険家だからです。一旦安定してしまうと、よせば良いのに何かをしたがります。うまく行けば素晴らしいと賞賛され、失敗すると、馬鹿呼ばわり。でも、これを止める事は誰にもできません。男は冒険好きなのですから。だから、男は浮気なんかするんでしょうね。

でも、それが男の価値でもあります。ロマンを求め何かをするのは未来を開くエネルギーなのです。女は安定を求めます。でも、女ばかりじゃ未来は開けないんです。冒険を求める男ばかりでもこの世は困った事になります。この両者のバランスは良くできたもんです。さすが、神様は偉い。

ですから、男は趣味に興じたり、何かに熱中しますね。女が熱中するのはもっと現実的なものです。男は冒険を求めてますから、その冒険の大小はありますが、小さな物から大きな物まで、冒険こそが男の夢、ロマンなんです。それこそが男の生きがいでもあります。だから、男は女がとうてい理解できないような物をほしがるんですね。でも、それが無くなるともはや男じゃ無くなるかもしれません。

それで、ヨットの事を考えますと、冒険しようと思ってヨットを手に入れるわけです。問題はその先です。それから先、どんな冒険をしていくか、冒険を世界一周する事だと思うのは、まだヨットが定着していないからです。冒険をしたかったらいくらでもできる。でも、世界一周で無くても、日本一周や遠くに行く事が冒険と思うなら、そうはできない。それでピクニックばかりしてたんじゃ、男は面白くないんです。面白く無いから、マリーナには来なくなる。それで、どこかよそに行って冒険を探すんです。夜の街を出歩くのもそのひとつかもしれませんよね。ヨットで冒険してたら、そんな事する必要は無くなります。

それで、ヨットで、今すぐにできる冒険をしたら良いんです。冒険はチャレンジですから、新しい事はみんなチャレンジになります。ちょっと強い風の時でも出るのも冒険だし、シングルでセーリングに出るのも冒険、暇さえあればセーリングに出るのも冒険になるし、スピンをあげたり、ジェネカー上げたり、セーリングに集中すると冒険の山になります。それをしないでキャビンでのんびり過ごしてばかりでは冒険性は無いから飽きてくる。ピクニックセーリングもたまには良いが、いつもそうなら飽きてくる。自分のヨットの最高を引き出してやろうと思うチャレンジ、ファーラーなんか使わないというチャレンジ、より小さいヨットで出て行こうとするチャレンジ、チャレンジは一杯あります。他人はともかく自分のレベルのチャレンジを続けていく事が大事ですね。

男はそういう風に出来てます。それをしなくなったら、飽きてくるように出来てます。心当たりあると思うんですが、いかがでしょうか?男が飽きるのはチャレンジではなくなった時です。それで、結婚した途端に、男は他の女性に目が行ったりしますね。いけませんが。浮気はいけませんが、他にチャンレンジが無くなったときは浮気に行きますよ。ならば、奥さんは少し許して、男にチャレンジさせておく必要がある。

一家団欒、ファミリークルージング、それも良いでしょう。でも、初心者の頃はこれでもチャレンジになりますが、すぐに何でも無い事になりますので、そうなる前に、セーリングを目指していただきたいですね。そして、たまには家族も誘ってあげる。これはチャレンジとしてでは無く、家族愛でしょうか。

マリーナに来ますとたくさんのヨットがありますが、多くはチャレンジ精神が不足したせいです。或いは、ヨット以外にチャレンジを見つけたせいでしょうか。ヨットは近場でもチャレンジできますし、外洋のメジャー級のチャレンジもできる。実に幅の広い遊び物ですから、相手にとって不足は無いはずです。一生やる価値があります。

男はみんな冒険家なのです。そこにロマンがある。ヨットに夢を描いてなんか言いますが、本当はそれを使って冒険するところにこそ冒険があり、ロマンがあり、夢がある。是非、自分のできる、今すぐできる冒険を自分で演出していただきたい。さすれば、皆さんがヨットに夢中になれば、ヨットがもっと売れるので、業者は大喜びなのです。そうすればサービスだって良くなります。良い循環ができますね。私にとってヨット販売は冒険です。これだと思うヨット、こんなのが良いと思うヨット、それが売れるかどうか、認められるかどうか、これはおおいなる冒険です。ですから、浮気なんかしてる暇ありませんよ。夜の街にも出てないですね。

誰かが、何かにチャレンジしている姿を見るのは、こっちも面白さを感じますね。ワールドサッカーをご覧になった方は多いと思います。何故、世界を興奮させるのか、彼らはおおいなるチャレンジをしているからでしょう。ですから、おおいなる冒険家は賞賛される。最終的には人間がベストを尽くしてチャレンジする姿は感動を呼びます。本来、どんなに社会が変わっても、人はそういう人間のチャレンジが好きなんじゃないでしょうか。そこに羨ましさも感じたりします。何故なら、男はみんな冒険家だからです。冒険家は冒険している時が最も充実しています。是非、セーリングして冒険してください。目の前の小さな冒険こそが男たる証になります。自分自身の証になります。

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