第十話 レジャーとスポーツ

日本人の勤勉さは世界的に有名ですが、考えると面白いと言いますか、変と言いますか、以前、政府が国民に向かって、もっと遊びましょうなんて話もありました。日本人は働き過ぎで、それがひいては貿易摩擦にまで発展した。西洋人が休んでいる時に、日本人は働いて、それで貿易に勝つなんてのは許せんなんて言い、働いて何が悪いと返答する。でも、西洋には政治では勝てませんので、もっと遊びましょうとなる。

日本人にとって、レジャーは余った時間に過ごすもの、西洋人は言いすぎかもしれませんが、仕方なしに仕事している感もあります。日本人にとって仕事は稼ぐというだけでは無く、もっと深いものであり、西洋人にとっては苦労の何物でも無い。こういう異なる文化を持つ人達が思うレジャーとは根本的に異なるものとなる事は当然です。レジャーは西洋人にとっては無くてはならない、生きる糧のようなもの、日本人にとっては余暇であります。

そこで、ヨットについて考えてみますと、ヨットは余暇か、或いはレジャーなのかという事です。日本人の文化で言うならば、ヨットをレジャーと捉えるならば、そんなに一生懸命やるものでは無い。やり過ぎちゃいけません。余暇ですから、仕事第一、その少し余った時間にヨットを楽しむべきです。
誰もそんな事を言いませんが、心の奥の方ではそんな声が聞こえてきます。毎日、毎日ヨット三昧、さぞ良かろうなんて言いながら、いざ時間ができてもそうはいかない。どこかで罪悪感が感じられる。落ち着かないのです。レジャーは単発的でなければならない。遊んでばかりじゃいけませんという事になります。

その点、西洋人は遊びの天才です。一生楽に暮らせるだけのお金があったら、彼らは一生懸命遊ぶんじゃないかと思いますね。昔、聞いた話ですが、日本人が窓際族になったら、しばらくして退職した。それを聞いたフランス人は窓際族は天国だと言う。仕事もしないでお金もらえるのに、何故退職するのか理解できない。天国じゃないかという。日本人にはそれが耐えられない。これだけの違いがあります。

ヨットをレジャーと捉える限り、日本人は使い切れないのではないだろうか?それじゃどうすれば良いか?ヨットをスポーツと捉えるのが良い。スポーツはレジャーとはちょっとニュアンスが異なる。企業が社内にスポーツチームを作ってサポートしています。スポーツは体を鍛えるとともに、精神も鍛え、人間を鍛える役目をする。仕事までにはならないが、単なるレジャーとも違う。スポーツは良い物という感覚がある。単純に遊んでいるという感覚では無い。根底にこういう感覚があるなら、スポーツをする事に罪悪感は無い。パチンコしに行くというと後ろめたさがあっても、スポーツしにいくとなるとちょっと堂々とできる感覚がある。

それで、日本人がヨットを満喫する方法はスポーツと捉える事ではないでしょうか?スポーツと捉えるならば、いつものんびりビールばっかり飲んでたんじゃ、宴会ばかりしてたんじゃレジャーであって、スポーツにはならないので、ヨットを走らせて、より良く走らせて、一生懸命スポーツする事ではないでしょうか。スポーツなら、セールカーブを良く見て、練習して、うまくなっていかなければなりません。それで進歩していかなければなりません。レジャーならうまくならなくても良いのですが、スポーツはそうでは無い。一生懸命やれば必然的にうまくなる。

こうやっていけば、さすがの日本人にも罪悪感も無ければ、遊び人という感覚も無い。ですから、思いっきりできるようになる。その合間に宴会してレジャーすれば良い。レジャーとは合間にやる物
余暇にやる物、スポーツはもっと追及していくもの、身につくもの、プラスになる物です。ですから、いつもいつもヨットに行ってのんびりしてちゃいけません。スポーツしてください。汗かいてください。そうすると、長い事やっていられません。2,3時間のスポーツはちょうど良い時間です。セーリングを勉強して、試して、どんどんうまくなって行って下さい。そうしますと、何の心にわだかまり無くヨットができる。心地良いスポーツが楽しめる。スポーツすると面白くなります。そして余暇に宴会して下さい。遊びに夢中になってる自分より、スポーツに夢中になってる自分の方が良い。仕事ばかりじゃいくら日本人でもつまらないが、でも、遊びばかりじゃあ物足らない、スポーツ、特にヨットなんてのは恰好の大人のスポーツです。

こういうスポーツなら、シングルハンドのデイセーリングが最高、究極の乗り方になります。追求するなら最高のセーリングができます。面白くなります。

ヨットをレジャーとして考えるうちは、ほんのたまにしかできません。それ以上は自分が許さない。意識はしてなくても、何となく後ろめたさが出てくる。スポーツなら、毎日だって時間さえあればできる。そういう感覚になりませんか?どうせやるなら、夢中になれた方が面白いのではないでしょうか
短時間のスポーツセーリングが余暇をいきいきとさせるし、仕事もいきいきとさせる。遊べない奴は仕事ができない、とか言う方おられますが、そういう方はのんびりしてません。一生懸命遊ぶ事を奨励してます。この場合遊ぶという事は寝転んでビール飲んでる事では無く、何かをする事をさしてる。ヨットでビール飲むのも家でビール飲むのも同じ事です。ヨットをスポーツして頂きたい。そうすれば全てうまくいく。それにはデイセーリングが最も良いのです。シングルなら最高です。これが日本流ヨット術です。ジャパニーズスタイルヨッティングです。

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