第七十話 ヨットの種類

クルージング派ヨットマンには、大きく分けて、3種類のヨットがあります。デイセーリングと、沿岸クルージングと外洋です。日本ではヨットに住む人は殆ど居ないので、それは考えないで良いでしょう。また、外洋に行く方も少ないですから、多くは、デイセーリングとちょっと遠出の沿岸、それはその延長で日本一周だって含めても良いかもしれません。

そうすると、デイセーリングかコースタル(沿岸)です。コースタルと言っても、多くても年に数回でしょうから、多くはデイセーリングになります。そうしたら、デイセーリングをいかに面白いものとして演出できるかにかかってます。そうでないと、いつかは遠くへと思いながら、ピクニックセーリングやってるか、宴会やってるかです。セーリングを楽しむなら、デイセーリングです。沿岸クルージングはエンジンで走ります。セーリングはデイセーリング。これで決まり。

デイセーリングを遊ぶ方法はふたつ。ひとつはそういうデイセーリング用のヨットにする。もうひとつは沿岸クルージングをも含めたコンセプトのヨットにする。前者はキャビンは最小限に、後者はある程度はほしい。でも、デイセーリングで使う事が多いので、キャビン一辺倒では面白くありません。それで、キャビンもあるけれども、セーリングをないがしろにはしない。そういうヨットの方が面白い。そうなると、操作性を考えて、メインシートトラベラーはコクピットにあった方が良い。誰が、コクピットにあったら邪魔だと言ったんでしょうか。キャビン入り口の向こう側にあったら、使いにくい。
ぜんぜん邪魔じゃない。

シングルだったら、ジブは場合によってはセルフタッキングでも良い。そして、デイセーリングを楽しむ為に、ジェネカーか、或いは、ジブブーム又はウィスカーポールで、全方角の風向を楽しめるようにしたい。

キャビンは寛ぎの場、セーリングして疲れた体を癒す場、デイセーリングオンリーなら、シンプルで良い。コースタルまで考えるなら、もう少しほしい。でも、日常のデイセーリングを楽しむ事を考えれば、大きすぎない方が良い。

これが私の基本的考え方です。全てはセーリング中心に考えて、その他のキャビン、宴会、沿岸クルージングはたまのバリエーションという考え方です。それで、外洋まで行こうというなら、話は別で、外洋の大時化を想定したセーリングまで考えないといけませんし、積載貨物の量もある。最近のヨットは外洋艇でも、日常のデイセーリングまでも比較的やり易いのもあるし、外洋だからと言って、頑丈一辺倒より、セーリングをないがしろにしない方が良い。

とにかく、基本はデイセーリングだと思います。殆どはそれでまかなえる。割り切れば、デイセーリングオンリーにしても面白い。そう割り切れれば、デイセーリングはもっと気軽になるし、もっとセーリングが面白くなる。結局、どんな使い方であろうが、セーリングだけはその使い方の主役に据えておくのが、ヨットを遊ぶ、最も面白い方法ではないかと思います。そうしますと、クルージング艇といえども、操船しにくいとか、帆走の妨げになるような要素はできるだけ避ける、そして、いかに帆走し易く、面白いかという観点で見るのが良いと思います。もちろん、それぞれにこだわりがあると思います。そのこだわりを捨てる必要は無いと思います。しかし、いかに帆走するかだけは念頭においておく方が、これから永くつきあっていくには必要な事ではないかと思います。

そんなにセーリング、セーリングと叫ば無くても良いじゃないか、と言われる方もおられる。俺はのんびりやって、酒飲んで、それで良いんだ。そう言われる方もおられます。もちろん、本人がそれでよければOK,何も押し付けるつもりはありませんし、それぞれで良いんですが、例えば、かつてレースを散々やってきた方々が、年齢とともに体力の衰えなんかで、レースを引退し、後はパイロットハウスのヨットでのんびりしたいという方もおられる。でも、レースにおけるセーリングと、レースとは関係の無いセーリングは、同じセーリングでも違うと思います。勝つ事に意味を見出すセーリングとただセーリングとは違うと思います。レースは勝つ事であり、デイセーリングは感じるものです。
後者は実にマイペースなのです。感じるままです。結局、学び、技術を得、最後は感じる。このフィーリングが最重要なのではないかと思います。

若い人達が、どんどん走る。御年配の方々がゆっくり走る。どちらでも、意識がセーリングにあって、自分のペースでよりスムースなセーリングを目指す。それは美しい走り方で、どちらでも良い。しかし、最終的には、その意識した滑らかなセーリングから、何かを感じるようになる。究極はここだと思います。そういう意味で、自分の外部には目的は無い。どこ走っても良いし、どこに行かなくても良い。滑らかなセーリングを目指しながら、いつも乗っていて、いつか、そのうち、何かそれまでには無いグッドフィーリングが得られたら。最高だと思います。

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