第三十話 FRP

先日聞いた話によりますと、プラスティックというのは紫外線さえ当たらなければ、半永久的に使えるそうです。紫外線こそがプラスティックの大敵です。ヨットには大抵はゲルコートが表面に塗装されています。このゲルコートにも種類がありますが、大抵は紫外線には弱い。硬いのですが紫外線には弱いので、特に濃い色、クロ、紺などはその変化がすぐに出てきます。白はそれがわかりにくい。

修理をしますと、ウレタンで塗装しますが、多分ウレタンの方が紫外線には強いようです。表面の輝きがゲルコートより長持ちします。但し、ゲルコートに比べると柔らかいので、擦り傷などが入り易いというのが難点です。

そこで、最近良くオプション塗装なんかで出てきたのが、オールグリップという塗装です。ベースはウレタンのようですが、硬く、紫外線にも強いという事で、船体カラーの選択時にオールグリップ塗装というのが出てきました。但し、これは非常に高価です。マストやブームなんかですとオールグリップ塗装のが標準に設定してある事もあります。傷に強く、紫外線にも強いので古くなった時に違いが歴然と出ます。

6年前に納入したセーバー402というヨットがあります。マストとブームはオールグリップ塗装ですが、オプションで設置したブームファーリングのドラムがマストの前に設置してあり、これはオールグリップではありません。ファーラーですからカバーが全く無い。6年後、どうなっているかと言いますと、マストとブームはピカピカですが、ファーラーのドラムの塗装ははげてきてパリパリ状態、これ程違うのか、と感心するやら。

ヨットという乗り物は車と違って、何倍も持つという事を実感してきました。でも、さすがに20年も乗りっぱなしではどんなヨットでも傷んできます。それで、ヨットは乗りっぱなしで捨てる物では無く、長く、何十年でも乗れる物として付き合う必要がある。つまり、20年後でもきれいな状態を保つ事が必要です。何故なら、20年でも寿命の半分かもしれない、或いは3分の1かもしれません。寿命の半分にも満たないヨットがほったらかしでボロボロというのは、どうもいけません。

海外の中古艇を見ますと、いつ何を交換したとか、こういうメインテナンスをしたとか、塗装したとか、いろいろ詳しく掲載されています。そうやって価格を維持しています。例え、自分がこのヨットに何十年も乗らないにしても、寿命をまっとうさせる為にも、今のメインテナンスは施して頂きたいものです。日本のヨットはざっと見渡して、船齢よりも歳を食って見える。これでは自分で価格を下げているようなもんです。

ちょっと前ですが、ある方が海外で現物を見て気に入って購入、日本に輸入されました。来た時は本当にピカピカでしたが、船齢は確か30年近かったのではないかと思います。でも、その後はどんどん落ちるばかり。ヨットの維持は自分でする。もし、自分でしたくなかったら、業者にさせてお金を払う。このどちらかです。操船ができるだけでは駄目なのです。

アメリカのある造船所の社長は、我が社のヨットは100年経っても美しい。そういうヨットを建造していると言っていました。でも、これでもメインテナンスが駄目なら、駄目ですね。

だからと言って、デッキにフルカバーはいけません。乗るのが面倒になる。乗った後にまた大きなカバーをつけると思うとやめようかな、という気になります。フルカバーはシーズンオフに、通常はカバー無しで、しょっちゅう乗って、時々掃除すれば良い。どんなに古かろうと、きれいなヨットは気持ちが良いもんです。

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