第三十八話 操作

繰り返しのセーリングで、現状のセーリングがどうなのかが解り始めると、それでも、最初はそれなりに面白さもあったと思いますが。解かれば解るほどに、もっと欲も出てくる。もうちょっと走ればとか、もうちょっと安定感が欲しいとか、何とかかんとか。

物足りなさは、何もヨットのせいばかりでは無く、自分の技術のせいもありますから、今すぐにやるとするなら、自分の技術の向上という事になります。セーリングとは、これを遊ぶ事だと思います。操作をひとつ加えて、セーリングが変わる。それが面白いわけで、その操作が熟練すると、もっと変わる。さらに、その変わる事が体で感じて解る。目で見て解る。熟練するという事は、そのひとつの操作を簡単にやれるという事で、違いが解る自分というのがセットだと思います。

ひとつひとつ操作を加えて、慣れていく。そのプロセスこそがセーリングという遊びだと思います。上手い人だけが面白さを味わっているのでは無く、そういうプロセスを持ち続ける事も面白さだと思います。だから、今、初心者であって、これから、上級者目指して遊び続ける事ができる。

楽器なんかですと、初心者レベルでは、なかなか面白いという事にはなれないかもしれません。ある程度上手くなると、俄然、面白くなる。しかし、ヨットというのは有難いもので、初心者でも面白い。向上していけば、ずっと面白い。しかし、その為には、考えないといけないし、集中力も必要になる。知性と感性を遊ぶゲームなんだろうと思います。

セーリングの理屈は、外国語で言うなら文法かもしれない。でも、文法だけ知っていても会話はできないので、実際に使っていきながら習得をしていきます。それと同じで、理屈は本を読んで理解して、実際にセーリングして、その程を知る。

全体のセーリングを把握する事は重要で、そのうえで、艤装のひとつだけを取り出して、その動きと役目を考えて、それを全体セーリングの中のひとつとしての機能を考える。そうやって、ひとつひとつを検証していく感じ? たくさんの艤装とは言っても、実際はそんなには無い。シート以外なら、バング、バックステーアジャスター、トラベラー、カニンガム程度、ひとつひとつの操作とその動きを見れば、何がどう動いて、それでそれがどういう作用をするのか、そしてそれがセーリング全体にどう影響するのか? 考えて、遊んでみる。

そして、さらに、それぞれが独立しているわけでは無く、何かひとつ操作を加える事によって、他にも影響をあたえ、結局は全体のバランスで走る事になる。そんな事も考えて遊んでみる。セーリングは操作をする事で遊び、与えた変化を遊び、かえってきた反応を再び操作に活かす。そういう循環でありますね。

それで、その各操作がし易いかどうかが重要であります。シートを引くウィンチの力加減と位置とか、その他の操作です。舵を持って、全部片手でやれるなら最高ですが、ヨットがでかくなると、セールもでかいので、パワーが大きくなり、だったら電動だってありえる。電動でも、調整幅は任意になりますから、面白さは残される。

また、現状の艤装の取り方を改造して、扱い易いようにする方法もある。ちょっとリード位置とか方向を変えたり、大袈裟な改造では無くても、それで、扱いやすくできればOK。これらが、セーリングをもやり易くしてくれるかと思います。

つまり、セーリングは自分の操作を通じて、ベターなセーリングを味わう事。操作する事で変化を起こすので、操作しないで良いのとは違い、操作した方が良い。その方が面白くなります。セーリングするに、ジブとメインのシート操作だけでも可能ですが、それ以外の操作も加える事で、セーリングはベターになる。それらの操作をしているうちに、今、どの操作が必要かが解り、どの程度の調整かも解ってくる。そして、その変化が解ってくる自分が居るわけで、それらがセットになるから面白くなるんだろうと思います。

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