第二十二話 求められる事

様々な造船所が建造するたくさんのヨットも、それぞれのジャンルに区分され、それが明確になってきました。このヨットはこういう使い方に合っているというのが、昔に比べたら明確化してきたと思います。それは、それぞれのジャンルで進化し続けてきたからだと思います。専門性が高まったとも言えます。

それぞれのヨットに得意分野がある。という事は、使う側が、自分の使い方をもっと明確にしないと、得られる面白さも減じられる事になります。乗ったことが無いから解りませんとかは言ってられなくなります。ただ、想像して、あれもしたい、これもしたいという事がたくさんありますが、でも、実際はどうなのか? 現実的に考える事も必要だと思います。夢を壊すような話で申し分け無いのですが、しかし、現実はこの先ずっと続くし、その現実において、より面白さを得る為でもあると思います。

それで、それを明確にする為に、ひとつづつ吟味していきます。まずは、クルーの問題。シングルハンドを可能にしたいかどうか? いつでも来てくれるクルーなり仲間が居るかどうか? それは家族でもあてにならない事が多いのです。また、シングルだけど、オートパイロットを駆使してという方法もあります。ただ、シングルは、何もひとりで乗らなければならないわけでは無く、ひとりで全て操船できるという意味であり、それは、誰をゲストに招待しても、何も制限が無いという事でもあります。もちろん、ひとりで気軽に出せるという強味もあります。そして、セーリングを重視するかどうかです。セーリング重視のシングルでしたら、できるだけオートパイロットには頼らないでできる方が良いかと思います。

それから、航行区域です。日帰りの範囲なのか? ショートクルージングか、ロングクルージングか? それらの航行区域の範囲によって、費やされる時間、日数が決まってきます。という事は、そういう時間/日数がどれだけ取れるのか? それと、年間におけるその頻度です。そして、自分の満足度の問題も重要です。

例えば、年に1回のロングクルージングを楽しみ、それで充分満足できるという事もあります。或は、年に何回かのショートクルージングというのもあります。でも、そのクルージング以外はどうするか? ピクニックするとか、デイセーリングを楽しむとか、いろいろあります。そこで、いろんな事をしたいという欲求はありますが、その中で最も重要視する使い方はどれか? ロングクルージングなのか、ショートなのか、日常セーリングなのか、レースなのか? だいたいこのどれかになるのではないでしょうか?

そのうえで、その軸以外をどう考えるか? ピクニックや宴会、別荘もありますが、多分、これらが軸になる事は無い様に思えます。しないわけじゃないが、最も頻繁に使う方法にはならないし、なったとしても、それでどの程度満足できるかですね。

やっぱり、数年でも実際に運営してみないと解りませんかね? だったら、どれかひとつ、取り敢えず気に入ったヨットのオーナーになってみて、お試しという事が必要かもしれません。そして、その後、買い換える。車程ではありませんが、ヨットを買い換えるというのは、普通にある事です。もちろん、一艇目がぴったりだったら、それに越した事はありませんが、それでも、長く乗り続けていきますと、欲も出てきますから、コンセプトは同じでも良いが、もっと大きくとか、もう少し速いとか、いろいろ出てきます。

どんなヨットなのかと吟味する事は重要な事ですが、同時に、どんなヨットが自分に合うかを吟味する事も重要になります。良く思う事ですが、みんなが持っている様な同じヨットが無難さを感じさせます。しかし、そんなヨットがマリーナに係留されたまま殆ど動かないとしたら、ひょっとしたら、自分も同じ道をたどってしまうかもしれません。みんながそうだからと、安心なんかしている場合じゃないと思うのですが?

一般的な考え方というのがありますが、それが間違っている事も少なくない。もし、正しいとするなら、何故、動かないヨットが多いのか?稼働率の高いヨットと低いヨット、その格差は大きい。では、稼働率の高いヨットはどんな考え方なのだろうか? いろいろあるあろうけど、気軽に出せるという事が最も重要ではなかろうか? だとするなら、気軽なヨットライフとはどんなヨットライフなのか? 

結局、時間の経過とともに変化していくものかもしれません。つまり、仕事現役時代はロングに行く暇など無い。だから、ショートかデイセーリング。引退したら、ロングに行ける。また、散々、ロングに行ったから、もうショートで良い。どれが良いかと言うより、状況に合わせて、変化していく事が必要だろうと思います。そして、その変化に応じて、乗り方が変われば、ヨットも変わる。だから、将来は買い換える事もあるという事は考えた方が良いかもしれません。ひとつで全てに対応するには無理がある。

しかし、ある程度経験をしてきたら、状況もさることながら、自分にはこのスタイルというのが分かってきます。それが最後のヨットになります。それで、ヨットはデイセーリングから始まって、デイセーリングで終わる。初心者にとって、デイセーリングが最も気軽になれて、次に、あっちこっち行きたくなって、その後は、またデイセーリングに戻る。でも、この時は質の高いセーリングを味わっている事かと思います。

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