第二十一話 変化の演出

変化の無い処に面白さはありません。いくらご馳走で大好物だとはいえ、毎日同じメニューでは変化が無いので、美味しくいただけなくなります。だから、我々が面白さを得るには変化によって刺激を受ける必要があります。

クルージングに行けば、少なくとも風景が変わります。行った先もホームポートに居るのとは違う変化があります。だから、船旅に限らず、人は旅行好きなのだろうと思います。

ただ、クルージングにはそうしょっちゅう行く暇が無いとするなら、近場で過ごすしかありません。そうなると、見慣れた風景しかありません。そこで、招待するゲストに毎回違う方を招くという方法もあります。しかし、これも簡単ではありません。

だとするなら、常に変化がある風に注目したらどうでしょうか? 誰もが、風が常に変化している事を知っています。しかし、ここで言うのは、その変化に対する注目の度合いの事です。変化を知っていても、注目の度合いによって違って来る。

近所をセーリングしますと、風景は変わらない。たまに、魚群で水面が盛り上がったり、そういう事はありますが、希であります。おまけにシングルや或はいつものメンバーではこれも変わらない。それこそ変わるのは風なのでありますから、その変化に注目した方が面白さを得られる事は明らかです。

その風の変化を最も感じられる為には、セーリングする事が一番だと思います。風に注目するという事はセーリングに注目する事と同じ意味を持ちます。風が変化し、セーリングも変化する。そこに注目するなら、変化満載で、やりようによって実に面白くなります。

風速が変化し、風向が変化します。緩やかに変化したり、急なブローが来たりもします。それらに注目度を上げると、その中でのセーリングが大きく変わる事が実感できます。風の変化だけでは、そうはならないが、セーリングという行為を通じて、その風の変化が具体的に現れる。走る方角が変化したり、ヒール角度が変化したり、スピードが変化したり、体感的なのも変化を感じます。つまりは、風に注目して、セーリングに注目すると、そこは変化だらけです。

そして、その変化が小さい事もあります。微軽風では風の変化はあっても、セーリングにおける変化は小さくなります。従って、セーリングの変化を増幅させる為に、微軽風用のセールを展開して大きくしたり、自分の感知度を上げて、小さな変化をより感じたりします。

ヨットに乗る方々は誰もが、風向や風速を気にしています。当たり前なんですが、その注目度をさらに引き上げて、変化する風をもっと楽しめるようにする事が、セーリングを楽しむ秘訣では無いでしょうか? 操船が上手いか下手かよりも、その前に、風にどれだけの注目度を置いているかの方が重要ではなかろうか?風の変化は、それに対応するセーリングの変化をどうコントロールして、自分が楽しめるようにできるか?そこを学んだり、練習したり、工夫したり、そうやって、それら自体を楽しむ事だろうと思います。

この事が当たり前になったら、他の事も変化として楽しむ事ができる。ピクニックだって変化になるし、クルージングだって、宴会だって、大きな変化になります。使用する主体が、最も大きな変化をもたらす事が重要だろうと思う次第です。それが風ではないでしょうか? ヨットなんですから。
セーリングを遊ぶ、風を遊ぶ。

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