第十六話 比較論

いろんなジャンルのヨットについて簡単に記述してきました。しかし、重要な事は、それぞれが単独で検討されるべきでは無く、他艇と比較されるべきであり、この比較無しでは意味をなさなくなるという事です。

速いと言っても、もっと速いヨットからすれば遅いですから。頑丈も、強固も、安定性もあらゆるものが比較によって理解される。それはこの艇とあの艇という二艇の比較もあれば、そのジャンルの比較もあります。いずれにしろ、比較によって、そのヨットの性格を知る事になります。もちろん、これまでに自分が乗ってきたヨットとの比較という事もあります。

サイズ、排水量、水線長、幅、バラスト重量、セール面積、これらを比較して、そのヨットの性格を知る。ただ、ジャンルを判別すれば、そのヨットがどういうヨットであるかは、ある程度想像する事ができます。そのジャンルの中で、さらに同じジャンルのヨットと比較を試みる。一方は乗った経験があるのなら、その比較はもっと明確になると思います。

さらに詳しくとなると、そのヨットに使われる素材や構造、工法にまで及べばかなり詳細が解ります。ただ、これらはあまり公表されていない。カーボンを使ったとか記載があっても、全体なのか、一部なのか、それもどこかまでは書かれていません。構造や工法においてもしかり。よって、そこは造船所全体を見て判断する事になると思います。その造船所が建造している他のモデル全体を見ます。それによってだいたいは判断できるのではないかと思います。

さて、比較ですが、最も端的に表すのが、セール面積に対する排水量比なのではないかと思います。もちろんん、これだけで判断するのは難しいのですが、でも、造船所がヨットにどの程度のセーリング性能を持たせたかは、そのヨットがどういう性格を狙うかを物語ります。そうすると、船型にしても、キールのデザインにしても、他の造りにしても、それにならう事になります。だから、極端な言い方かもしれませんが、この値の比較だけでも結構な事がわかると思います。

外洋艇なら、この値は小さい。レーサーなら、ぐんと高い。まあ、一部に、数値は高いのに、船体が強固では無いとか、そういうのも無くは無いのですが、その判断の為には、その造船所が建造する他のモデルなんか、全体を見て判断する方が良いとは思います。

しかし、何故か、この値が一般的には出されていない。だったら自分で計算するしかありません。
セール面積÷(排水量÷64)3分の2条です。セール面積はフィート単位、排水量はポンド単位です。但し、比較する時に、セール面積がジブなのかジェノアなのか、そういう事も考慮すべきですが、ただ、それぞれのヨットの標準設定セールで比較しても良いかもしれません。同じジャンル内なら。本来であれば、IJPEによるセール面積のデータによって比較されるべきでしょうが、これらのデータを出していないのもありますから。

ジャンルが違うと、素材や構造、工法までも違う事があります。(同じジャンル内でもありますが)
兎に角、比較してその違いを割り出す。そのうえで、見た目のデザインやらを見る。否、見た目から入って、気に入ったヨットの比較という事でも良いかとも思います。性能も重要ですが、性能だけでは無い、気に入る事はもっと重要だと思います。

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