第六十五話 寿命

ヨットの寿命というのはどれぐらいだろう? そんな質問を以前は受ける事がありました。でも、最近は、そんな話は立ち話の話題にも出てきません。 目の前に20年はおろか、30年以上のヨットもごろごろあって、しかも現役で、手入れが良かったら、結構きれいです。そのせいか、20年程度のヨットでも、何でも無い意識が広がりつつあります。昔だったら、20年のヨットはかなり安くなった感があります。何でも手入れ次第。特に、昔のヨットは頑丈だった。重いけど。今のヨットの方が軽いし、速くなってきた。FRPという材質への理解が深まってきたせいだろうと思います。

寿命と言えば、セールの寿命もあります。一般的に使われるダクロンは丈夫です。実に長く使えます。しかし、レーサーが使うハイテクセールは寿命が短いと言われる。2、3年とか言う話もあるぐらい。これは求めているレベルが違うからだろうと思います。

本気度の高いレーサーが、ハイテクセールを使って、そのセールで本来の性能を維持できる寿命だろうし、という事はそこまで求めないとしたら、寿命はもっと長く使える。10年以上前の事ですが、あるヨットにケブラーセールをジブファーラーにして、メインもファーラーにしたヨットがありました。セールはかなり古く、乗る度にフィルムがパラパラと落ちてきて、その度に修理したりして乗っていたわけですが、それでも、走るとかなりのパワーを感じ、良く走ってくれたと思います。そのうち、ボロボロになってきたという事で、ダクロンセールに作り替えたわけですが、比べれば、ボロボロケブラーセールの方がセーリングとしては良かったと記憶しています。パワーが全然違った。

という事で、ハイテクセールでもトップレベルの性能を求め続けるなら、寿命は短いかもしれませんが、そうでも無ければ、例えば、それ程本気度が高くないレースへの参加とか、純粋にセーリングを楽しむとか、そういう場合なら、寿命は長いと考えて良いのではないかと思います。ただ、自分が高性能セールの感覚に慣れてしまったら、満足できなくなるかもしれませんが。

という事で、デイセーラーでセーリングを楽しむにも、可能であるなら、ちょっと良いセールを使えればと思います。セールは主機と言われながら、あまり重視してこなかったかもしれません。しかし、セールが良くなると、セーリングは全然違ったものになります。たただ、もし、セールをハイテクセールにしたなら、ハリヤードも一緒に、良いのに変えないと、セールは伸びないが、ハリヤードが伸びるという事になります。それではハイテクセールの効果が薄れてしまいます。

ロープの寿命はと言いますと、これも長い。でも、古くなると硬くなって使いづらいので、そうなったら変えた方がセーリングには良いと思います。切れるかどうかの問題では無く。

つまり、寿命とは壊れて乗れないとか、切れるとか、破れるとか、そういう事で来るのでは無く、求める性能のレベルによって決まる言えるのかもしれません。丈夫なダクロン、破れちゃいないが、伸びてるセールは多いものです。そう言えば、これもまた昔、伸びに伸びたセールがあって、全然フラットにならない。それで、思いっきり上り角度が悪くなって、タックしても、タックしでも殆ど進まないというのもありましたね。それは寿命でしょう。

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