第六十二話 セールの選択

前話でコードゼロタイプか、或はジェネカーかとふたつに絞りました。この選択はオーナーの考え方次第によるわけですが、それでは話が進みませんので、あるひとつのアイデアを思いつきました。それは、ヨットの性能の違いによる選択です。

例えば、軽いヨット、軽いというのは排水量だけでは無く、それに対するセールエリアの大きさを考慮した、いわゆるセールエリア/排水量比で、数値が高いヨットという事になります。こういうヨットは、微軽風でも他のヨットより速いです。当然ながら、セールもそれなりの軽いセールを採用している事が多いと思います。

例えば、この度、輸入致しましたディナミカ940です。これは非常に軽いヨットで、微軽風にもスイスイという感じがします。あまりストレスを感じないとするならば、このヨットには敢えて、コードゼロでもっと上りをというより、ダウンウィンドの方を重視して、ジェネカーとしても良いのではないかと思います。

一方、ちょっと重めのヨットは、微軽風では走らない。相対的にです。スイスイとは行きません。例えば、アレリオン28なんかですと、決して重いヨットではありませんが、今日のデイセーラー群の中では重めに入ってくるようになってきました。それで、もちろん、下りの事もありますが、上りでもっとスイスイ感を味わいたい。という事で、コードゼロタイプが良いのではなかろうか?上りが面白くなりますし、下りだってそこそこ下れます。

この目安としては難しいですが、例えば、セールエリア/排水量比が25あたり以上になりますと、かなりスポーツ度が上がりますから、これ以上では、ジェネカー、これ以下ならコードゼロという処でどうでしょうか?

これは実際に走って、微軽風の上りがどんな具合なのかを感じて、それで上りはこれでも良いなら、下り用のジェネカーだろうし、上りにちょっと重みを感じてくるなら、コードゼロという選択になるかと思います。その目安を一応、25あたりとしました。もちろん、個人の感じ方次第だろうと思いますが。

デイセーラーでシングルハンドで第三のセールを使いこなす。これって、かなり面白くなるでしょうし、それで自由自在に走る事ができれば、このうえないと思います。そんな濃密なセーリングですから、2、3時間もあれば十分です。

デイセーラーはセーリングをスポーツする。頭を使って、体を使って、感性を刺激する。知的なスポーツなのです。人間の持つあらゆる要素をもって遊ぶスポーツです。ちょっとシート引いて、その変化を感じ取ります。それがクルージング艇とは違う処です。加速感を感じます。滑らかさを感じます。セーリングが面白いと言える。それがデイセーラーのセーリングです。いつもピクニックばかりしているわけではありません。ピクニックにしても、ただ動いているというのでは無く、走らせているという感じがあった方が良いんじゃないでしょうか?

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