第六十三話 デイセーラーという選択

今の日本では、まだこの選択ができる人は多くは無いかもしれません。車がたいして普及していない時代に、いきなりスポーツカーを選択するようなものです。ですが、車には仕事をさせる事ができます。通勤や、移動、荷物運び等々です。しかし、ヨットには仕事がありません。移動はあるかもしれませんが、それは単なる移動では無く、旅というレジャーです。

仕事をさせるなら、それなりのヨットという事になるわけですが、仕事じゃないなら、純粋に自分の遊びとしてのヨットを考えれば良い事になります。つまり、いきなりスポーツカーという選択もおおいにあると思う次第です。

ヨット先進国の欧米では、レースも盛んに行われています。もちろん、クルージング艇で旅を楽しむ人も、別荘として楽しむ人も多い。しかし、今日のトレンドとして、セーリングを気軽にスポーツとして楽しむ方もどんどん増えてきています。その証拠が、世界中から新しいデイセーラーが次々に誕生しているという事です。

日本でも、遅ればせながら、徐々にではありますが、増えてきています。20年前ではそうはいきませんでした。この二十年の間で、自分の使い方が解ってきた。何が必要で何が不要なのかが解ってきた方が増えてきました。20年前なら、あれが要る、これが要るというセリフが多かったのですが、今日では、あれもこれも要らないという人が増えてきたと感じます。

ヨットのオーナーになるという事は、海に自分の世界を持つ事になります。それをどんな世界にするのか? 欧米のデイセーラーオーナーには、ビッグボートからの乗り換えの方が多いと聞きます。その気持ちは良く解ります。デイセーラーはクルージング艇とは違うし、レーサーとも違う。比較的新しいジャンルではありますが、それでも20年以上を経過してきました。この間に、世界は変化してきました。デイセーラーが次々に新しく誕生してきたのです。

当初はクルーが居ないから、或は遠くに行く時間が無いから、そういう理由もあったかもしれません。しかし、今日では、そういう理由では無く、面白いセーリングを気軽に味わ得るからという理由がその選択にあります。クルーが居ないからシングルでは無く、いつでも気軽にセーリングできるようにしたいからシングルです。時間が無いからでは無く、濃密なセーリングを味わうには短時間の方が良いからです。

スポーツセーリングはレースではありません。セーリングをいかにと思う事が既にスポーツしています。いかに速く走らせるか、いかに舵を取るか、いかに操作をするか、いかにスムースにタックするか、その如何にを問う事はそこに結果もあって、その変化に面白さを感じる事ができます。乗れば良い、動けば良い、そういう時代では無くなりつつあります。それで面白さを感じる事は少ない。
そこに気づいてきた時、ならばどうするか? その答えのひとつはデイセーリングにあると思います。そのデイセーリングを追求してきたのが、もちろんデイセーラーなのであります。

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