第四十話 迷い

ある一本の電話がありました。ヨットの選択で迷っている。シングルでできるようにしたいし、でも、でかいキャビンが欲しいし、セーリングのパフォーマンスも捨てがたい。それに、たまにはクルージングの旅にも出るだろうし、できるだけ頑丈な方が良い。恐らく、これが一般的な考え方だろうと思います。

考えますと、ヨットにはいろんな使い道があって、どれも魅力的に見えます。ですから、あらゆる可能性をできる限り可能にしておきたい。その気持ちは解ります。しかし、どれにしても、どこまで求めるかだと思います。あるひとつを深く求めたら、その分野にもっと相応しいヨットがあります。しかし、そこを求めた分、他の部分が不得意になってしまう。あちらを立てれば何とやら。

これを全て解決する方法は残念ながら無いと思います。実際にヨットを乗り続けますと、その方の好みとして使い方が偏っていく。ある方は旅を主体にされるでしょうし。、ある方はセーリング、どれもを平均的に使うという事は恐らく無いと思います。つまり、それが何であるのか、いくら考えて解りません。解らないものを考えても仕方ない。

こうなったら、理屈で駄目なら、感覚に聞くしかない。理屈はさておき、どのヨットに魅力を感じているかです。良く良く、自分の感覚を意識しますとそれが解ってくる。頭はいろいろ考えますが、感覚はどこかに重点が置かれている。それが解かれば、まずはその感覚に従う事が今の正解ではないかと思います。

数学の様に、どこかに正解があるのなら、徹底的に考えて答えを出すべきだろうと思いますが、ヨット選択においては正解は無い。理屈は理屈として、いろいろ考えますが、それで結論が出ない時は、感覚に頼る。それが正解だと思います。

自分の感覚を常に意識しておくと、その答えが簡単に解るかと思います。頭と気持ちの違いがすぐに解ります。但し、感覚がいつも正しいわけじゃない。でも、頭脳ゲームが結論をだし兼ねる時の、最後の切り札としては使えると思います。迷ったら、感覚に聞いてみる。

世界は理屈と感覚でできていると思っています。それは世界は物質やその動きの出来事と、心でできていると思う次第です。物質や出来事は自然の法則に従う。ですから、これは徹底的に考えて答えを出せる。しかし、世界の半分は感覚ですから、その物質や出来事に対して、人がどう感じるか、それによって行動が変わりますから、物はそれを人間が捉えてはじめて意味を持つ。考えて解らない事は感じるしか無いと思います。

この二つをより有効に使う方法は、考える事と感じる事、その両方を意識しておくことではないかと思います。意識しているからこそ、その二つを有効に使い分ける事ができる。行動している時、考えている時、何をして、何を考えているかを意識し、同時に、何を感じているかを意識する。この意識は何も批評するのでは無く、ただ意識する事ではないかと思います。

この二つを使っても結論が出ないとしたら、それならサイコロでも振ってみる。重要な事をサイコロで決めるのはバカバカしい様に聞こえますが、でも、頭脳に聞いても、感覚に聞いても解らない事なら、本当はどれでも良いんではないかと思います。だからサイコロで結構なんだろうと思います。

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