第四話 デイセーリングの可能性

時が経てば、人々はどんどんヨットに対する認識が変わっていきます。一時的な思いよりも、より現実に即した使い方がなされるようになってくるかと思います。それはヨットが今現在どのように使われているかに寄るかと思います。それは各人それぞれという事もありますし、全体的な状況という事もあると思います。最初はあこがれだけでも良いかもしれないが、何年も経つと、現実とのバランスも考えないと面白さが得られなくなります。

日本では、ヨット環境が決して良いとは言えません。マリーナの事もあるかもしれませんが、天候もそうです。雨が降る。台風も来る。北側では雪も降って、かなり寒い。ロングのクルージングに出かけますと、必ずと言っていいぐらい時化に出会う。それに、まとまった休みが取れるかどうかもあります。

そういう諸々の要素を考えますと、もっと近場での遊びが増えてしかるべきではないかと思います。近場だからこそ、いろいろ対応できる事も多いかと思います。風が全く無くなった。或は強すぎる。雨が降ってきた。状況によっては、すぐに帰る事もできます。また、微風や強風に対して、短い時間だからこそ、いろいろ対応して遊ぶ事もできます。ロングなら、我慢という事になります。

近場だからこそできるいろんな遊び方があり、それに何と言っても、気軽にできるし、気軽だからこそ頻繁にできるという事もあります。そういう意味では、日本ではデイセーリングがもっと流行ってしかるべきではなかろうか、もちろん、遠くに行く方もおられますが、ベースとしては、デイセーリングがもっと多くなって良いのではなかろうか?

もしそういう意識になりますと、もっと小型艇が増えていく事も考えられます。30フィートを基本に考えるなら、それ以下のサイズがもっと増えて、例えば、キャビン無しでも構わないという考え方も出てきてもおかしくないと思います。何しろ、気軽さが一番ですから。

デイセーリングに必要な要素はキャビンの大きさや充実度というより、セーリングが中心になっていくと思います。ピクニック的なセーリングから本気セーリングまで、様々なヨットがあり、様々な使い方があります。

実は、既にデイセーリングをされている方は多いし、稼働率が最も高いのもデイセーリングだろうと思います。しかしながら、意識の問題で、全体的には、遠くにクルージングに行きたいと思う方は多い。しかし、現実にはそう簡単にはいきません。それで、遠くへ思いを馳せる方々と、そういう現実を踏まえて、今できるデイセーリングを楽しもうと思われる方々とに分かれていく。

もし、デイセーリングが一般的になり、基本の遊び方として広く認識されるようになりますと、いつかは遠くへと思いを馳せる方々も、今できるデイセーリングをもっと楽しむ事ができるようになるのではなかろうか?

昔はレースかクルージングかの二つでした。そして圧倒的にクルージング派が多かったわけですが、でも、実際にクルージングに出られる方は多くは無かった。それぞれに、いろんな事情もあります。それだけに、多少なりとも不満もあり、仕方無いので、デイセーリングをする方もおられる。
しかし、デイセーラーの登場で、欧米ではデイセーリングというコンセプトが多くの方々の意識に浮上してきます。デイセーリングを意識的にコンセプトとした方々は少なかったのが、それを意識的にコンセプトとして浮上してきますと、考えてみれば、目の前にヨットを遊ぶいろんなチャンスがある事に気づきます。仕方無くデイセーリングというのでは無く、積極的にデイセーリングを遊ぶ方向に目が向きます。

デイセーリングは、近場である事によって、ピクニック的な気楽なセーリングもあれば、本気セーリングもあり、どこかにアンカー打って、海水浴もあるし、時にレースに参加する事もある。シングルでも良いし、家族でも、デートセーリングでも、或は、クルー有りでも良い。近場である事によって、でかいヨットで無くて良いし、遊び方は大きく広がっていくのではないかと思います。

という事で、デイセーリングは将来、もっと広がるだろうと思いますし、もし、そうならないとしたら、多分、日本のヨットの数はたいして増えないかもしれません。日本のヨット界を拡大していくのは、デイセーリングというコンセプトが認知され、積極的にアプローチする方々が増える事。それに、
コンセプトとして、デイセーリングはこれまでのレースやクルージングと同等の価値がある。面白さの種類が違うだけだろうと思います。後は、その認識の広がりを期待したいですね。

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