第三十八話 ピクニックへの工夫

本気セーリングとか、緊張と緩和とか、そういう類の事をたくさん書いて来ました。セーリングはピクニックとは違うと書いて来ました。しかし、だからと言って、ピクニックをないがしろにしているわけではありません。実を言いますと、ピクニックセーリングというのは、恐らく、誰もが最も楽しんでいるジャンルではないかと思います。

友人や家族を乗せて、ヨットを楽しむ。そういう場合のピクニックセーリングは誰もが最も頻度高く楽しんでおられます。クルージング艇だって、セーリングヨットだって同じだろうと思います。何故なら、最も気軽に楽しめるからではないでしょうか?

ピクニックだからと言って、出たらすぐにお弁当とおしゃべり、そればかりではせっかくのセーリングを楽しむ事が少なくなります。ピクニックと言えど、何が楽しいかと言って、せっかくのヨットなんですからセーリングが楽しい。それが気軽にできるというのがピクニックです。

重いクルージング艇でもピクニックはできます。しかし、近場だからこそ、セーリングのベターな感覚を味わいたいものです。旅ではありません。ドライブ感覚です。だからと言って、超本気セーリングというわけにも行か無いでしょう。

ピクニックだからと言って、お弁当とおしゃべりだけでは物足りない。しかし、本気セーリングでは、ゲストがついていけないかもしれない。そういう事で、ピクニックセーリングを最も楽しむ方法は、その中間を取ると良いのでは無いでしょうか?

中間とは、本気セーリングをピクニックの中に時々織り交ぜる事です。穏やかな最初の30分、そろそろゲストもこのままでは手持ち無沙汰を少し感じ始める。そこで、ちょっと本気セーリングを味わってもらいます。場合によっては、操作を手伝ってもらいます。そうやって、ピクニックにもメリハリをつけていく。状況に応じて、またピクニックに戻します。この繰り返しです。すると、ゲストも、爽やかなセーリングを味わい、ちょっとスリル感があるようなセーリングも味わい、セーリングの何たるかを垣間見ることができますね。ゲストにとっても、のんびりだけを2時間も3時間も過ごすのは、徐々に退屈感もにじみ出るかもしれません。

よって、おおいにピクニックセーリング楽しんでいただきたいと思います。但し、これまでとは違う、ちょっと工夫が必要です。ゲストが過去にセーリングの経験がある方でしたら、尚の事、本気セーリングを少し多めに。ゲストに合わせて、ゲストの状況に合わせて、もちろん、風にも合わせなければなりませんが、少なくとも、ゲストにとっても、ヨットにさえ乗れば良いという事でも無いと思います。いかに、楽しさや面白さを演出するか、そういう工夫も必要かと思います。

さて、その為にも、ゲストが来ない時、デイセーラーのシングルの時、本気のセーリングをしておきます。上達を目指し、知識を得、技術を習得し、セーリングを堪能します。これがあるからこそ、ピクニックセーリングをどうにでも演出する事ができます。もちろん、これは何もピクニックの為ではありません。自分が面白さを得る事を第一として、そこから成長を得る。だからこそ、ピクニックでもそれが役に立つ。そうしますと、自分のヨットライフにもメリハリを付ける事ができると思います。

気軽なピクニック、最も頻度高く味わう事ができるピクニック、だったら、そこにもっと楽しさや面白さを工夫しておいた方が良いかと考えます。ゲストに対するご馳走も良いですが、最高のおもてなしは、セーリングの演出にあると思います。その為にも、自分自身が普段からセーリングを堪能しておくと良いと思います。

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