第九十四話 初期設定

自然はいろんな状況があるので、最初に基準となる設定が必要かと思われます。メインを展開して、ジブを出す。その時の設定がどうなっているか? その初期設定を基準に、風が強くなったり、弱くなったりした時に、その基準から変化させる事になると思います。例えば、風速5mぐらいで、きちんとセールをを設定して、舵がほんのわずかにウェザーヘルムを感じるぐらい。舵は風下側にわずかに切られた状態で、ヨットが真っ直ぐ走る。

そのようになるようにマストを立てる。マストの前後の傾きです。セール2枚の風圧の中心となるポイントと、上りで走っている時の船体の重心位置のずれによって生じるヘルムの調整。ウェザーヘルムが大きすぎるなら、マストを前に倒す。倒すというより起こす。逆なら、後ろに倒す。これはフォアステーの長さによって決める事ができる。実際のセーリングからマストを少し起こすべきか、倒すべきかを判断する事になります。

フォアステーの長さが決まったら、左右の傾きが無いように真っ直ぐ立てる。サイドステーのアッパーをかなり強く締めて、中間はほどほどに、ロワーもしっかり締める。でも、アッパー程では無い。
サイドステーのアッパー以外は、マストを曲げる時、つまり、バックステーを引いた時のベント量を決める事になる。アッパーを締める時、バックステーを引いた状態で締めると締めやすい。何故なら、バックステーを引くと、アッパーのマスト側が下に引かれて緩むから。そして、マスト中間は前にせり出す。そのせり出す量はサイドステーの中間のステーのテンションで決まる。ロワーしかり。

この設定で、上り、わずかなウェザーヘルムで、舵を風下にわずかに切った状態で真っ直ぐ走る。
これが初期設定になるかと思います。そこから、風速がもっと速くなると、ハリヤードが伸びるし、セールも伸びる。その結果、セールのドラフトは深くなるし、後退し、ヒール角度は大きくなるし、ウェザーヘルムも強くなる。それがブローの様な数秒間だけの事なら、舵をもっと風下に切ってブローを抜ける事もできるが、できれば、舵はそのままで、同じヒール角度を保ちながら抜けたい。それで、メインシートをその時だけ出すか、或は、トラベラーで落とすか?多分、これはどっちでも良いんじゃないかと思いますが。抜けたら戻す。

前方の海面を見ていますと、ざわついている箇所があります。そこに突入する時、事前に構えていると、そんな事が簡単にできる。ちょっと面白い。解ってやるから面白くなります。

但し、最近の素材の良さはこれをカバーしてくれる。ハリヤードやセールに伸びにくい素材を使うと、そのブローが、そのまま加速としてスピードに現れる。でも、そういう素材は通常のと比べても高価です。でも、全然違う。感激するぐらいの違いを感じる事もあります。まあ、そこまでするかどうかは別ですが。

ブローでは無く、風速が上がっていく時、一時的な対応するより、きちんと操作をする事になります。深くなったドラフトを浅くするし、後退した位置を元に戻す。よって、バックステーを引いて、セールをフラットに、さらにカニンガムを引いて、前に移動させる。

要は初期設定を基準に、風速が変われば、それに操作を加えて対応していく。その対応で追いつかなくなる時はセールをリーフしていく。セルフタッキングジブは、ほっといても良いんじゃないでしょうか?その代わり、メインセールをきちんと操作していきます。

基準となる例えば風速5mが都合よく吹くわけではありませんが、しかし、基準という事を頭に入れておく事は重要ではないかと思います。その時々において、基準からどの程度調整するかという事を意識しておきますと、調整量をどのくらいの変化にするかが少しづつ解ってくるのではないかと思います。基準は、地域によっても違うかもしれません。良く吹く地域と、そうでもない地域、自分が乗る風域の中間点で良いんじゃないかと思います。

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