第九話 数学的遊び

排水量5、000kgのヨットがあるとして、そのセールエリアが50uとした場合、そのセール面積/排水量比は17.3になります。では、排水量を2倍にして、セール面積も2倍にしたらと計算してみますと、セール面積/排水量比は21.8となり、同じ17.3を得るには、セール面積は1.6倍で良い事になります。

つまり、重量が2倍でも、同じ性能を得るには、セール面積は1.6倍で良い事になります。では、逆に、排水量を半分にした場合、セール面積も半分なら、13.8という数値になり、同じ17.3を得るなら、セール面積は半分では無く37%減で同じ数値になります。

という事は重ければ重い程、セール面積はそれ程大きくする必要も無い事になります。これには水線長は計算に含まれていません。単純に重量とセールエリアの関係です。

2、500KG と 31.5u、 5、000KGと50u、 10、000KGと79.3u、これらのセール面積/排水量比は同じであります。

見方を変えてみますと、重量が2倍になっても、セール面積は1.6倍で良い事になります。という事は、現状のヨットに、ちょっとセール面積を増やすだけで、セール面積/排水量比を効果的に上げる事ができます。

5、000KGの排水量を10%減らしたとしたら、その比は17.3から18.5に上がります。では、排水量はそのままで、セール面積を10%広くしたら、数値は19になります。

という事は、排水量を軽くするより、セール面積を広くした方が効果的という事になります。ところが、セール面積が広くなればなる程に、取扱いが大変になっていきます。どこまでなら良いか?そこが問題ですが、昨今のクルー不足等を考慮しますと、あまりでっかいセールにはしたくない。それで、排水量も軽くして、両方で効果を高める。ちなみに、排水量を10%減らして、セール面積を10%上げると、数値は20.4です。

排水量を軽くするというのは、そう簡単では無いと思います。強度を保つ必要もあります。でも、セールエリアを増やすのは比較的簡単です。メインセールに大きなローチを付ける事もできます。
ジブを大きなジェノアにすれば効果的です。ただ、大きくなったら、取扱いが大変になります。
そう言えば、微風時に微風用のセールと何度も書きましたが、これが抜群の効果がある事が解ります。微風だったら、多少セールが大きくなっても、それ程大変な事は無いと思いますが。

それ程セール面積の効果があるという事は、強風時のリーフが実に効果的に働く事も解りますね。という事は排水量も大事ですが、微風時にでっかいセールで、強風時に小さなセールとなる様に考える。

レーサーは強風時にもよりでかいセールでスピードを競いますが、一般セーリングとして、それ程高い数値は不要で、それより、微軽風時にいかに大きなセールエリアを展開するかを考える。微軽風用セールですねやっぱり。そして、メインとジブだけなら、数値がそれ程高くなくても良い。強風時ですし。それがどの当たりが良いのか? やっぱり18〜25ぐらいの間かな? 25は結構高い方だと思います。かなりスポーティーだと思いますね。

もちろん、他の要素、水線長、船型、接水面積、スタビリティー等々も影響するのは当然ですが。
これは数学的遊びです。いろんな要素が総合して全体の性能を作りますから、これだけやっても、あまり意味は無いかもしれません。でも、知る意味は大きいと思います。

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