第八十三話 緊張感と集中力

レースにつきものなのが緊張感です。緊張感無くしてレースなんか楽しめ無い。もし緊張感が無かったら、誰があんなに一生懸命やるだろう? また、その緊張感は集中力によってもたらされます。つまり、レースという場が、自然に集中力を高めさせ、それが緊張感を創る。

面白さというのは、その集中力がもたらす緊張感の中にあると言えるかもしれません。という事は、レースで無くても、面白さを味わう為には、集中力を発揮すれば良いという事になります。
もちろん、集中力と言ってもその度合いもありますし、瞬間的な事もあると思います。

レースというイベントでは、そのレースという場が自然に集中力を促します。しかし、レース以外では、自分でその演出をしなければなりません。それができるかできないかによって、面白さの度合いも違ってきます。

誰でも、強風になりますと集中力が高まります。それは強風によってもたらされる危険性を感じ取るからだろうと思いますが、この緊張感は、危険性に対する緊張感ですから、面白さとはちょっと違うと思います。そうでは無く、セーリングにおける集中力の高まり、これこそが面白さをもたらす。

緊張感の無いのんびりしたセーリングだと、たまにはそういうのも良いんですが、面白いというわけでは無いと思います。それでもセーリングを味わえば、そこに、ちょっと何かが気になって、セール操作をして、それでスピードが少し上がるとかを確認したりしますと、少なくともなんらかの変化を観察できますと、そこに集中力が働いていますから、気持ちには少し緊張感があります。すると、少し面白さを味わえる。

要は、いかに集中力を発揮できるか。 面白さをより多く味わうには、より集中力を持って、緊張感を創り出す必要があると思います。それは何も、最初から最後まででなくとも、ある時間でも、飛び飛びでも良いし、終始のんびりもたまにはあっても、やっぱりメリハリをつけた方が面白い。

集中力は意識次第で、いつでも、どこでも発揮する事ができる。強風だろうが、微風だろうが、意識次第です。そのコントロールができるかどうかによって、面白いか面白く無いかが決まる。しかし、普通は風次第になる事が多い。風がある程度吹いていけば、自然に集中してきます。それが一般的かもしれません。でも、微風に集中力を発揮するのは難しい。

では、中風以上では自然に集中するのなら、集中が難しい微風では、それこそ微風用のでっかいセールを展開して、セールパワーを上げていけば、集中し易くなります。それが面白さをもたらす事になると思います。つまり、風頼りでは無く、風の具合によってセーリングの仕方を変える。面白さは自分で演出しないと、かなり限定されると思います。それをしないで風頼りばかりでは、あまり面白さを味わえないのではないでしょうか?もちろん、でっかいセール無しでも集中できる人は居ますが、それなら結構だと思います。

それと、もうひとつは自分のセーリングの中にテーマを持つ事だと思います。上りや下り、いろんな状況において、あるテーマを設定する。セールの形状をいろいろ試してその変化を見るとか、タッキングをいかにスムースにやるかとか、いろいろあると思います。そのひとつひとつのテーマへの集中が、面白さになるし、積み重なっていけば、上手くなる。

こういう事を続けていきますと、セーリングの質感というのが感じられてきます。ただ走っているだけでも違いが解る。集中してきたおかげで、自分の感覚が鋭くなっていくからです。速いか遅いかという事以外にも、いろんな感じが解るようになる。すると、もっと面白さを演出できるようになる。
だから、いつでも、どこでも集中力を発揮できるようになっていく。すると、もっと面白くなる。

面白さは、最終的には、自分で創り出すものという事になると思います。気持ちをセーリングにおけば、少し面白さを味わい、もっと集中できれば、もっと味わえる。ピクニックの時でさえ、瞬間的に感じます。それは瞬間的にも集中力が発揮された時。

この面白さ無くして、長年のヨットライフを楽しむ事は難しいのではないでしょうか?楽しいだけでは、一時的には良いが、長いスパンを考えますと、いかに面白さを演出できるかにかかっているかと思います。ヨットはセーリングに意識を置いて、いかにセーリングを演出し、集中力を発揮できるかにかかっていると思います。面白いから集中できるのか、集中出来るから面白いのか。卵と鶏みたいなものですが、まずは、自分で意識して、意識をセーリングにおいて、自分自らアプローチした方が良いかと思います。集中すると、テーマも見えてくる。どんどん進めると思います。だから、まずは、セーリングに集中してセーリングをしてみる事が重要なのではないでしょうか?そこにセーリングのコツがあるような気がします。

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