第七十六話 ヨットは遊びです

クラシックなデザインは世界的にみても人気が高い。未だ持って昔ながらのデザインのヨットが建造されています。ヨット以外にそんな事があるんだろうか、どう考えても、現代の合理性から言って、性能的には現代のヨットの方が上だろうと思います。でも、クラシックは人気が高い。これはヨットが遊びである事を思わせてくれます。遊びと合理性は別なんだという事。人々はクラシックなデザインに魅了されます。遊びなんですから、合理性ばかり追求しても楽しく無いという事かもしれません。

それでかどうかは知りませんが、クラシックデザインとモダンの融合が試みられました。20数年前
アレリオン28が登場しました。水線から上は有名なデザイナーであるハーショフ氏のデザインを踏襲し、水線以下はモダンなラインを持つ。そして、艤装も、素材も工法も最新技術を使いました。アレリオン28が登場した時、いろんなプロデザイナー達は最も美しいヨットと高く評価したものです。
そこからアレリオンはさらに進化を続けていますが、水線から上のクラシックなフィーリングはそのままです。

その後に出てくるデイセーラー等は、このクラシックとモダンの融合にならっていきます。クラシックデザインにしますと、どうしても前後にオーバーハングを設けます。すると、水線長が短くなります。
しかし、敢えて、そのデザインは残しています。それは遊びの部分と考える事ができます。

一方で、モダンデザインも生まれてきます。もちろん、クラシックファンばかりではありません。それと、クラシックデザインには雰囲気の演出と言いましょうか、多少のチーク材がデッキに使われ、その部分にはメインテナンスが必要になりますが、モダンであれば、それらが一切ありません。それもモダンデザインが支持される理由のひとつかもしれません。モダンデザインはそれで格好良いし、美しい。

そうこうしていましたら、クラシックデザインにおいて、その雰囲気を残したまま、水線長を長くする為に、バウのオーバーハングを無くしたデザインが生まれてきました。これは、多分、ワリーヨットのNANOというデイセーラーからではないかと思います。これで、少しでも水線長が長くなります。
当然ながら、後部側はオーバーハングを残しています。これまで無くしたら、クラシックの良さが失われるかもしれませんから。

そして、また一方のモダンデザインには、デッキに木が無かったのですが、モダンな見かけにチークデッキを貼ってきました。これが、何とも美しい。

ヨットは遊びです。だから、チークデッキなんか貼ると重くなるのですが、それでも敢えてそうする。
それは遊びという理由以外無いと思います。合理的進歩を遂げながらも、遊びとしての美しさやフィーリングを忘れては面白味が無くなってしまう。もちろん、何を遊びとするかは個人に寄るものではありますが。

そして、その遊びの部分というのは、成熟すればする程に出てくると思います。それは自分の遊び感覚が解ってくるからかもしれません。それまではどうしても合理性に重きを置き、徐々に、遊びが顔を出す。敢えてサイズダウンするのも、その遊びのひとつかもしれません。

繰り返しますが、ヨットは遊びです。合理性の追求だけでは満たされないものかと思います。遊びは感覚ですから、理屈では片付けられません。その遊びの感覚を大事にすると、もっと楽しめるようになるのではないかと思います。

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