第七十四話 けじめ

これまで、いろんな体験をしてきて、それぞれにけじめをつけてきただろうか? あの微風に退屈感を覚えて、え〜い、しょうがない、エンジンかけるかと、そそくさと帰ってしまった。或は、風が強くなって、苦労しながら帰ってきた。スプレーもたっぷり浴びて、もう嫌だとか思った。そんなこんなにその後、きっちりけじめをつけてきただろうか?

あの微風は、今日の微風でも同じ事。あの強風は、今日の強風でも同じ事。きっちりけじめをつけてこなかったせいで、また同じ経験をする。或は、もう出ない。微風も強風もいつおきてもおかしくない。大事なゲストを招待した今度の週末にあっても不思議はない。でも、それが起こる度に、仕方ないと、風のせいにしてきた。仕方無いと思ってきたかもしれません。今日は吹かないんだから、出てもしょうがない。今日は吹いてるから出れない。じゃあ、あんた、一体いつ出るの? これはある奥さんの言葉です。

だから、きっちりけじめをつけましょう。出ないとけじめをつけるなら、それはそれでりっぱなけじめです。でも、その前に、何とかできないか?微風だったら、今度はこうしよう、強風だったらこうしようというけじめをきっちりつけておけば、今度乗る時の対応能力が上がっていますから、より楽しめるようになるのではないか?徐々に、けじめをつけながら、広げていければ、そのうち、いろんな風を遊ぶ事ができるようになる。もちろん、風だけではありません。あらゆる処にそういう箇所がある。

いつも言いますが、デイセーラーに微風用セールをファーリングで一枚持っていれば、その対応能力は格段に上がると思います。セール面積/排水量比が20なら、微風で、微風用セールを上げれば、その値はグ〜ンと上がって、40とかにもなります。微風にはパワーを上げなければなりませんし。

そして、強風では、コクピットから出る必要も無く、リーフが可能です。だいたいはワンポイントで、2ポイントのリーフはしていない。強風になったら、メインをリーフして、それでもならジブを巻いて、それでもならセールをおろして帰ります。相当なる強風だと思います。それ以上頑張っても楽しくないから。

ひとつひとつの経験にけじめをつけていく。次に同じ状況に遭遇したら、どうするか?そのけじめが積み重なるとどうなるでしょうね。全体のセーリングがきっと面白くなる事は間違いありません。何故なら、解って、ちゃんと対応もできるんですから。

面白さとはこうやって創っていくものかもしれません。そうしたら、どんな風でも、大抵は楽しむ事ができるようになる。そうしたら、たまに招待するゲストにも大いに楽しんでもらえるようになる。そして、自分はベテランの域。年数では無く、けじめの蓄積量です。それはノウハウとも言い換える事ができます。蓄積が溜まってくれば来るほどに、面白さも増えていくと思います。

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