第一話 面白さの為に

野球を見に行ったとします。最初は野球場の雰囲気とかで、ビール飲みながらの観戦は楽しいと思います。それが年に1回とか2回なら、それで楽しむ事はできますが、例えば、毎月一回でも見に行こうものなら、もはや野球場の雰囲気とビールだけでは楽しめなくなります。

それでも、野球にドラマチックな展開があったなら、楽しさはあります。素晴らしいピッチャーで、三振の山とか、逆転ホームランとか、でも、これらは大きな出来事であります。大きな出来事であるが故に、そうは起こりません。中には地味な展開もあるわけです。

野球をしょっちゅう見に行きますと、そういう地味な展開も多い。派手な展開は滅多にあるものじゃない。それでは、楽しく無い。だから、もう野球場に行くのをやめるか? 

あるいは、もうひとつ別の方法があります。それは野球に詳しくなる事です。バントにも走塁にも、守備にも、いろんな処を知れば、それだけそれらの指し示す意味が解ってきます。何故、ここでバントなんだとか、何故走らせないんだとか、詳しい方はいろいろあります。詳しい方は意味を知って、より深い処で野球を楽しんであります。だからこそ、しょっちゅう見に行っても面白さを感じる事ができると思うのです。そして、時に、ドカンとドラマチックな事もある。

楽しさだけでは野球の面白さは解らない。面白さを解るには、野球というものをより知る必要がある。そして、楽しさはしょっちゅうは起こらない。でも、面白さは自分が知っている深さの分だけある。

それをセーリングに当てはめても同じだろうと思います。楽しさだけなら、年に1回か2回か? それも自然に左右されての事です。でも、セーリングをこれから10年やるとしたら、面白く無いと続ける事は難しい。それには、ヨットについて、セーリングについて、より知るしか無いと思います。そうでなければ、滅多に動かないヨットになってしまう。

タックはするかしないかでは無く、舵を切る角度、タイミング、セールのシートを放つタイミング、等々を知れば、そういう事に気付く。知らなければ、タックをしたかしないかだけで終わります。いかにしたか、いかにスムースに行えたか、いろいろあります。何故、ここでタックをするのかもあります。

真っ直ぐ走っていても、前方にさざ波が見えて、ブローに入る。ヨットはヒールがきつくなる、上ろうとする。だから、どうするか?ただ、走る、スピードが何ノット、風は何ノット、等々以外に、気づけば面白い部分がたくさんあります。快走なんて事を味わえるのは、自分の休みと天候が合い、そのうえで、風がいい具合という偶然に遭遇しない事には起こらない。だいたい、強すぎるか弱すぎるか、あるいは丁度良くても、短い時間だったり。その快走を楽しむのは当然としても、その前後、セーリング全般にわたって、いかに面白さを得るか? それには、より知る事ではないかと思います。
野球と同じだと思います。

初心者の頃、ある程度乗れるようになると楽しくなります。そこからどういう方向に進んでいくか?
乗れるからもう良いとなりますと、後は、偶然を待つしか無くなります。でも、こっちからアプローチして、より知ると、セーリングの妙が解ってくる。だから、ヨットはレスポンスが良い、良く走る高性能ヨットが良いとなります。ただ、レース主体では無いので、シングルで操れる範囲にはなります。

という事で、よりヨットを楽しむ為に、学んで、より多くを知る事。それが重要だと考えます。本当の面白さを味わおうと思ったら、楽ばかりしては得られません。それなりの知識と行動が要求されますね。

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