第九十五話 イチロー

4000本安打を達成。誰もが認める超一流のバッターです。派手で、豪快なホームランを放つわけでは無いが、彼の打撃、守備、走塁、どれをとっても一流ですね。ホームランは派手ですが、でも、野球というゲームの面白さはそこだけにあるわけじゃない。彼は、内野安打さえも魅力に変えてしまった。野球ゲームが成熟しているが故に、ヒットに、バントに、守備に、走塁に面白さを見いだせる。

野球というゲームは日本に根付いています。多くのファンが居るし、成熟している。が故に、野球というゲームの楽しみ方もいろいろあって、ホームランがどんどん出る豪快野球から、投手戦の緊張感、投手とバッターの心理戦、配給の妙、盗塁、クロスプレー、実に多岐に渡ります。

ヨットだって同じで、でっかいだけが良いわけじゃない。豪快に走るだけが面白いわけじゃない。セーリングがもっと成熟していくと、いろんな処に面白さを見出す事ができるようになるのではなかろうか? タックひとつとっても、いかに上手くできるか? その洗練度に面白さを見出す事ができるのではなかろうか?

セーリングだって、本当は至る処に、その魅力を見いだせるのかもしれません。イチローの野球を見て、そんな気がします。素早くセールを上げる。しかも簡単に。そんな事さえも、何だかちょっと良い気分になれる。ヨットを理解する事、セーリングを理解している事、そのうえで、いろんな事ができるようになる事、それはどんなに小さな事でも、解っているが故に、ちょっとした満足感も湧いてくるのではなかろうか?

イチローという選手には、野球というゲームのあらゆる瞬間をないがしろにしないという姿勢を見て取れる。内野ゴロでも全力で走る。だから、4000本の安打を達成できた。その一連の真剣さが、ファンを魅了しているのだろうと思います。また、4000本目のヒットも、その途中の一本のヒットも同じだけの価値があるとも言っています。

セーリングにもあらゆる瞬間に、真剣に取り組む事ができたら、セーリングの完成度は高くなる。何も職業にしているわけでは無いが、少しはそんな姿勢を見習っても良いかなと思います。そうすると、セーリングに新しい魅力を発見できるかもしれません。

そんな真剣セーリングには、2〜3時間が良い処。長時間やってももたない。野球一試合分と同じ長さで十分ではなかろうか? だから、デイセーリングなのであります。

どんなに頑張っても、イチロー選手みたいに一流にはなれないし、その必要もありませんが、でも、
それ相応の世界を味わう事ができるのは間違い無いと思います。

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