第九十二話 鋭敏なセンサーを持つ

どれだけ違いを感知できるかが最重要ではなかろうか? 操作をして、その変化が感知できないとしたら、それは面白さには繋がらないから。仮に、技術レベルが低くても、操作して上手くいかなかったとしても、その違いが解るなら、技術はそのうち上げる事ができる。変化が解る事が重要なのであります。

だから、操作をして、感じ取る事が重要です。その為に集中力が必要になります。大きな変化ならぼけ〜としていても解りますが、小さな変化は注意しないと解りません。面倒くさいな〜とおもわれるかもしれませんが、より繊細に入っていかないと、セーリングはそれこそ風任せ、吹けば走るし、吹かなきゃ走らないという単純なセーリングで終わってしまいます。そんなのを5年、10年と続ける事自体が至難の業です。

だから、風任せが存在する事は避けられませんが、それでも、よりベターを目指すなら、より面白さを求めるなら、繊細の方向に向かう必要がある。より微妙さを解る必要がある。それで、一旦、それが解るようになったら、もうこっちのもの。その後は楽に解るようになる。そして、楽に解る人にとっては、その変化が微妙かどうかでは無く、変化があるか無いかであり、このふたつは全く異なる事になります。

こうやって、感知能力が高まっていったら、楽に、それでもより多くを感じられるようになりますから、面白さは違ってくる。そのうち、そのヨットでの限界を感じるかもしれません。そうなると、もう少し鋭敏なヨットがほしいな〜となるかもしれません。それで、自分の感知能力はさらに進化していく事になりますね。という事はもっと面白くなる。

誰もが、陸上から離れて、ヨットに乗っただけで、ある程度敏感になります。ちょっとした音を感知すると、何だ? という事になります。自然に、誰もが集中力が高まっています。それをもっと高めていこうという話で、そうすると、音、動き、感触等のみならず、意外な事に気づいたする事もあります。何故だか解りませんが、ネジの緩みを見つけたりする事もあります。

舵を握って、その感じに、大雑把から微妙の変化にも気付く。いろんな事に気付くと、セーリング自体も変わる。当然操作の仕方にも影響を及ぼします。つまり、全体が洗練されていきます。それこそが、セーリングの目指す処ではないでしょうか? それは同乗している人にも解らない。本人だけが解る、洗練された世界です。一緒に居ながら、異なる世界に居るわけです。

集中力が高まっている時、何だか普段とは全く違う感じになります。いろんな事が解ってくるんですね。普段以上の実力を発揮できる。すごく上手くなった感じがします。適度な緊張感を持って、しかも、体はリラックスして、ヨットが自分の物になったな〜という感じがします。

そして集中力が切れた途端に、元に戻ります。上手くなるというのは、この元のレベルを上げていこうという事で、緊張を楽しもうという事にもなります。要は、より多くの変化を感じ取り、腕を上げて、その変化をより良いものにしようという話です。変化が解る事こそが面白さに繋がると思います。

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