第八十七話 SADRの考察

たかだ遊びに何をぐちゃぐちゃ書いてんだと思われる方もおられるかもしれません。でも、そのたかが遊びであるヨットには、奥の深いセーリングというのがあります。10年とかの長期に渡る遊びにおいて、そこを味あわないではもったいないという気がします。セーリングはヨットそのものだから。それで、今後もその路線で進めたいと思います。

何度も書いて来ましたセールエリア/排水量比(SADR)ですが、もう少し考えてみます。この数値が全てを物語るわけではありませんが、おおまかには、そのヨットの性能、性格を表していると思います。それで、もう少し考えます。

このSADRは排水量に対するセールエリアの大きさですから、例えば、重い船体を持つヨットでも、セールエリアさえ大きくすれば、高い数値を得る事ができます。高い数値を獲れば、軽いヨットという事になります。理屈ではそうですが、でっかいセールは操作面を考えますと大変になります。そこも重要なポイントです。

30フィートで3トンの排水量を持つヨットがあるとして、そのSADRが20だとします。もうひとつ、40フィートのヨットで排水量が6トンあるとして、やはり同じSADRが20だとします。排水量が2倍です。
前者のセールエリアは約41u、後者では65uぐらいです。

同じサイズで考えますと、30フィートで排水量3トンと4トンのヨットがあるとしますと、どちらもSADRが20の場合、前者はセール面積が約41u、後者では約50uになります。

当然の話ではありますが、船体重量が軽い方が、同じパフォーマンスなら、セール面積が小さくて済む。という事はその分、楽に操作ができるという事になりますし、もし、3トンの重量のヨットに50uのセールエリアを持たせるとSARは24をオーバーします。

つまり、船体は軽い方が、当然の事ですが、SADRが同じなら楽に操作出来るし、同じセールエリアにすると、よりパフォーマンスが上がる事になります。

この事は特にシングルハンドであるなら重要になると思います。微軽風ならでっかいセールもあまり苦にはなりませんが、強風になると、リーフするとは言え、やっぱり結構大変になる。ですから、速いヨットを求めるにしても、でっかいセールエリアにすると大変ですから、軽い船体の方が、その分、セールも小さなセールで同じパフォーマンスを得られる事になります。今現在所有されているヨットのデータを計算してみてはどうでしょうか?その得た数値で今のパフォーマンスがある。それを実感されているはずです。

数値データは理論値です。でも、実際の運用を考える場合、操作性とかも十分考慮しなければなりません。

また、SADRが非常に高くて、微軽風に良く走るヨットの場合、船体重量に対するセールエリアが大きいわけですから、風が強くなっていきますと、スピードがどんどん増していきます。レースでクルーが居るなら良いのですが、シングルハンドの場合でしたら、そのスピードを持て余す事もあるかもしれない。だから、無闇にSADRが高い方が良いとは言えません。それで、微風と強風の両方のセーリングを考える必要があります。

理屈では強風においてリーフすれば良いとなるわけですが、でも、実際は、ちょっと吹いただけで、ハイスピードになったりしますと、結構大変なんですね。何が大変かと言いますと、その走りにおいて、ヨットが非常に鋭敏になるという事です。自分がその上を行かないとコントロールが非常に大変になる事もある。シングルハンドは、全部ひとりで面倒見るという乗り方です。だから、シングルだったら、SADRが25ぐらいかな〜と思ったりします。もちろん、人にも寄りますが。

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