第四十一話 舵

車は前輪のタイヤを左右に振って方向を変える。後輪は動かない。ヨットの場合は前輪が動かないで、後輪が動くようなもの。だから、後輪が左を向けば、右に曲がる。それがティーラーなら明確に解ります。ステアリングホィールの場合は、そこは調整してあって、車と同じように、右に切れば右に曲がる。でも、ラダーは実際は左を向いてる。

我々は車に馴染んでいるので、ステアリングホィールは簡単に解る。でも、ティラーは逆なので、
ちょっと最初は戸惑うかもしれません。でも、すぐに慣れる。

ステアリングホィールはラダーシャフトからワイヤーを引っ張ってきて、それでステアリングホィールに繋がるが、ティラーはラダーにダイレクトに接続されています。それで、ラダーの微妙さが手に良く伝わる。だからティラーの方を好む方も少なくない。

舵は全ての基軸です。舵が定まってこそ、セールが決められる。全ては、舵に合わせる事になり、舵は従って、ボスなのです。ボスがふらふらしていたら、部下は合わせようが無い。だから、ボスはある意図を持って、きちんと舵取りをしなければなりません。そこにみんなが合わせる。

本来、ヨットはチームワークで成り立つ。各ポジションに人を配置して、状況に応じて、みんなが一緒に動く。そのチームワークが良いと、ヨットは効率良く、無駄なく、走る事ができる。その本質は今も変わらない。しかし、変わってきたのは人間の方。ヨットを出すのに毎回、7人も8人も集めるのは大変だ。しかも、頭数さえ揃えば良いというものでも無い。そのポジションを知っている人でなければならない。そういう人集めが難しくなった。

大人数でチームを組んで走る。チームワークが良いと気持ちが良い。しかし、異論はあるでしょうが、ひとりの人間がそのポジションのみをひたすら行う。それも良いかもしれないが、遊びである限り、他のポジションもやってみたい。舵はもちろん握ってみたい。

クルー不足の時代になって、少人数で動かす事を考える。別に、少人数用のヨットがあるとは思えない。ショートハンドを可能にしたと良く聞くが、どこがそうなのか?何故そうなのか、今一解らない。人が少なくなれば、同時にできる事が順番にやる事になる。それだけ時間がかかる。しかし、順番にやるなら、大抵のヨットは舵を持つ人ともうひとり居れば何とかなる。スピンは別かもしれないが。だから、ショートハンド可能という意味が良く解らない。

シングルは、この点、舵から手を離さないのが前提です。だから、その状態で、いろんな操作ができる必要がある。いろんな艤装の配置と要求される力の問題。もちろん、オートパイロットを使えば、自分がクルーになるのと同じです。ボスはオートパイロットというコンピューターを持った機械です。そんな機械に楽しませる手は無い。よって、セーリングは自分で舵をできるだけ握った方が面白い。走らせるのが目的では無く、走らせて楽しむのが目的なのですから。オートパイロットはあくまで助手みたいなもので、一時的に任せる事はある。でも、ボスにしてはいけません。

ただ、クルージングになると話は変わる。ボスはコクピットでゆったりして、助手に舵はやらせる。乗り方によって考え方は変わります。だから、どっちをしているかを意識しておく事は必要になる。

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