第三十一話 速い?

速いですと書かれてあっても、その根拠が書かれていない。速いと一口に言っても、どれだけ速いのかは解らない。まあ、見るからに速そうだけれど、速いと書くなら、もっと具体的な根拠を示して欲しい。読む側の立場からすればそうではなかろうか? そうしたら、自分のヨットとか、自分が知っているヨットとかと比較ができるから、もっと解りやすい。

広いというなら、どれだけ広いのかという事にもなります。何か、もっと具体的な、客観的な数値データみたいなものは無いでしょうか?もちろん、数値データにしては広く感じるというようなデザインの妙なんかもあるわけですが、それはそれであります。まあ、メジャーで測るのが一番かな? スピードだったら、スピード計と風向風速計か。

それでも、全部は解らない。そうそう簡単には全部は解らない。これが車ならまだ解りやすいのかもしれません。舗装された道路を走るわけで、その道路が波をうったりしないわけで、いつも同じ状態にあるわけですから。

という事で、ヨットの全貌を知るには、ある程度乗り込まないといけないのかもしれません。微風時、中風時、強風時、その間にもいろいろあるわけで、どこかひとつを取り上げて評価もなかなかできないのではなかろうか?

そんな事を言ってたら、いつまでたっても解らないので、参考として数値データがある。しかし、それでも、フィーリングは解らない。だから、ヨットは面白いという事になります。重めのヨットなんですが、そこそこ吹けば良く走る。と言っても、他のヨットより速いかは別の話。そこそこ走ってくれて、面白かったなら、それが良い。

でっかいヨットで、高いフリーボードのヨット、スピード計の8ノットという数値を見て、速いなと思うより、低いフリーボードで、6,7ノット出ている方が速く感じる。ならば、速く感じる方が面白い。どこかへ行く目的やレースでは無い限り。遊びですから、感覚の方が重要です。そうでなければ、例え10ノットでたとしても、たかだか18Kmです。のろのろ運転であります。でも、ヨットで走るとスピード感があります。それは10ノットを楽しんでいるのでは無く、そのスピードの感じを楽しんでいるわけですから。

役にも立たないヨットに対して、何とか役にたてようと思うのが間違いで、無駄は無駄のままでおいておく方が、本当は遊べるのではなかろうか?低いだの、短いだの、狭いだの、そんな事より、そのヨットの無駄にも思える面白さを満喫した方が、遊びとしては健全であろうと思います。

ところが、そうは思えないから、もうちょっと天井が高ければとか、もう何人か分のベッドがあればとか考えます。無駄な物を何とか役にたてようと考えてしまう。だから、遊べなくなる。そんなものはどうにかなるものであります。だいたい、寝泊りなんかは滅多にしないのであります。

メリットがあれば、その裏にデメリットがある。便利機械が壊れれば途端に動けなくなる。そんなものであります。狭いキャビンは窮屈だ。でも、その御蔭で重心は相当低い。また、その御蔭で、フリーボードが低くて、同じスピードで走ってもスピード感があるので、走って面白い。

という事は、自分の面白さはどこにあるのか?キャビンか? セーリングか? 私はいつもセーリングに軍配を上げています。もちろん、人それぞれで良いんですが。面白いセーリングに勝るヨットの遊び方は、他には無いと思っています。そして、その面白さは感覚であります。スピード感、レスポンス感、スムース感、安定感、操作感、云々。キャビンはどうでも良いとは思いませんが、過度には求めない。その代わり、どんな感じ?

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