第三十話 重量

重量というのは走る物にとっていつも課題になります。快適に走る点においてですが、車しかり、自転車だってそうでしょう。ヨットも当然ながら、軽い方が良い。それは特に風が弱い時です。風が弱いと重量が軽いか重いかで随分走りが違ってきます。それで、造船所は、常にいかに軽くするかを求めますし、でも、同時に頑丈な船体でなければならないという矛盾をどうにかしようと努力します。

さて、軽い船体ができたとしても、今度はセールの問題は残ります。風が弱い場合、セールが重いと、風がセールの形を作ってくれず、だらりと垂れ下がってしまいます。せっかく軽い船体を作りながら、もちろん、それだけでも効果は高いのですが、さらに、軽いセールにすると、弱い風でも、セールがセールの形を成してくれると、推進力を得る事ができます。

軽いセールの典型はスピンの生地です。通常ダクロン生地の10分の1ぐらいでしょうか。弱い風でもふわりと開く。だからこそ推進力が生まれます。でも、軽い生地は強風には弱い。だから、使い分ける必要がでてきます。

強風だったら、重い船体だろうが、重いセールだろうが、そのヨットを走らせてくれます。でも、我々が一般的に乗る風は強風という事もありますが、弱い風の方が多い。何故なら、強風は避けたくなるからであります。

外洋のセーリングをしているなら、強風でも避ける事はできません。それで、重くなろうとも、強風に耐える事を考えます。という事は微軽風では走らない。しかし、通常のデイセーリングを楽しむ場合には、過ぎたる強風は避けますから、やはり微軽風でも走れるように、楽しめるように、軽い船体と軽いセールがより面白さを感じさせてくれます。

通常使われるセールはダクロンです。メインもジブも、微軽風でも使うが、強風でも使う。だからセールは重い。もちろん、カーボンやケブラーのセールもありますが、価格は高いし、寿命も短い。それで、お薦めしてきたのが、微軽風用のセールという事であります。

通常は、ダクロンのジブとメインで良い。しかし、微軽風で走らない時はこの微軽風用のセールを使う事で、微軽風での上りから下りまでをカバーしようという事です。上りと言っても、ジブセールを使う時程は上れません。下りと言っても、本来のジェネカーを使う程は下れません。でも、レースで無い限り、我々がセーリングを遊ぶうえにおいては十分に遊べるセールだと思います。これまで、吹かないからエンジンでもかけようかと思う状況において、この微軽風セールを上げて、よりセーリングを楽しんでみましょう。

私見ですが、ジブとメインの他、もう一枚のセールというなら、この微軽風用セールかなと思っています。もちろん、ファーリングにする事で、使い方は簡単になります。このセールはコードゼロのように微軽風で上れます。何故なら、ラフが直線で固定されるからです。そしてジェネカーのように下れます。何故なら、軽いスピン生地を使うからです。形状はやや浅目にします。ファーリングですから、それをきれいに巻けるようにする為です。

ジェノアの形状をスピン生地で作ったとしたら、下りにだって使えます。しかし、それでは上りではもたない。よって微軽風用として、超ライトジェノアだと考えても良い。そうしたら、ある程度の微軽風での上りに使えるし、下りにも使えるという具合です。そんなセールはありません。ですから、セール屋さんに言って作ってもらわねばなりません。既存のジェネカーを改造するというのは無理がある。これはジェネカーのようで、ジェネカーじゃない。コードゼロのようで、コードゼロでは無い。果たして、その正体は? まあ、その中間的なセールとでも言いましょうか。やっぱり名前を付けた方が良いかな〜。

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